ペイン

イディオッツのペインのレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
3.0
あの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と『奇跡の海』の間にラース・フォン・トリアーがこんなヘンテコ映画を撮っていたとは…笑。

本作は“ドグマ95”と呼ばれるデンマークにおける映画運動・プロジェクトの一貫の作品であり、そんなドグマ95には「純潔の誓い」と呼ばれる、映画を製作する上で10個の(めんどくさい)ルールがある。

テーマ的にはかなり攻めていて面白いのだが、如何せんそのめんどくさいドグマ95のルールもあって、撮影はロケ撮影のみとか、映像と関係のないところで作られた音(効果音など)をのせてはならないとか、カメラは必ず手持ちとか、照明効果は禁止とかで、はっきり言ってかなり見辛い。荒削りといえば多少聞こえはいいかもしれないが、そんなものではなくとにかく画面に映るすべてが荒く汚いのだ。

私はトリアーに関しては好きな作品は好きなのだが、トリアー嫌いで有名な黒沢清監督がかつて言っていたことで、「ラース・フォン・トリアーはほとんど手持ちのビデオカメラを使ったりしているんですが、デジタルの登場と重なるように、本当にいい加減な映像だけで作っていくようになりました。もちろんライトも焚いていないし、色彩のことも全く考えていないように見える。これが新しい映像だと言わんばかりに90年代の後半からよりはっきりしてきました。こういうのに較べると、70年代の深作欣二の手持ちカメラが、何とダイナミックで美しかったことかと思い出されます。」と。

たしかに深作作品はあれほどハードで荒削りなのに、常に画面に一定の華やかさと美しさと大胆さが同居しており、改めて深作って凄いんだなと思わされた次第。

とはいえドグマのラース作品を知れたことは大きな収穫だった。
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