masahitotenma

イディオッツのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

イディオッツ(1998年製作の映画)
3.0
デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、独自の映画ルール「ドグマ95」(ロケのみでの撮影、カメラは手持ち、人工的な照明の禁止など10個のルール)に基づいて製作した作品。
「金の心」三部作の第二作目で、知的障がい者を演じることで偏見を持つ社会を挑発する集団"イディオッツ"を描く。
原題:The Idiots   (1998)

カレン(ボディル・ヨアンセン)はある日、たまたま入ったレストランで知的障がい者の集団に遭遇する。
手を掴まれ彼らが帰る車に乗り込んだカレンは、レストランでの挙動はすべて演技だったのだと知る。
カレンは、リーダー、ストファー(イェンス・アルビヌス)の伯父が売出中の別荘で共同生活をし、集団の解散までの2週間、行動を共にする…。

~イディオッツ集団(リーダー)の行動(一部)~
・障がい者のフリをして、レストランで食事代を踏み倒す。
・障がい者のフリをし、難癖をつけて金をゆすり取る。
・障がい者を演じる若いイェップ(ニコライ・リー・コース)をギャングのテーブルに置き去りにする
・同席した本物の障がい者に苛立つ。
・別荘を買いたいと申し出る夫婦に「近所に障がい者施設がある」と告げ、障がい者を演じるイディオッツの面々を夫婦に引き合わせ、追い払う。
・「障がい者たちを隣の市へ移動させれば補助金を出す」と告げた市役所の職員に激怒して別荘を追い出し、車の後を全裸で襲いかかり、去った後も興奮が止まらず錯乱状態で暴れ出す。
・祝いのパーティーで「何でも好きなことをしていい」と言われ、「全員でセックスがしたい」と言い出し、乱交パーティーが行われる。
ただし、一番若いメンバーのイェップとジョセフィーヌ(ルイーズ・ミエリッツ)は、純粋な気持ちで交わる。

~後半~
・薬を常用すべき精神疾患がある娘を家に連れ戻そうとジョセフィーヌの父が訪れる。
・"家庭や職場に復帰したらここでの生活と同様に知的障がい者を演じることができるか"のテスト実験をストファーが提案する。
カレンは、自分の番になったとして、立会人スザンヌ(アンヌ・ルイーセ・ハシング)を連れ自宅に戻り、知的障がい者のフリを始める。
2週間前、カレンは幼子を失い、葬儀の前日失踪していたのだが…。

~カレンの家族~
父、母、2人の妹、夫

~イディオッツの他のメンバー~
・妻のいるアクセル(クヌド・ロメール・ヨルゲンセン )
・彼と不倫関係にあるカトリーヌ(アンヌ・ゲルト・ブジャルプ・リイス):アクセルの広告代理店に顧客として現れ、障がい者のフリをする。
・医者
・教師(画家?)

「障がい者」のフリをするイディオッツのリーダーは、人々の偽善を暴くことを目的としているだけで、障害者を援助しようとか、他人のために何かをしようという気がありません。
心に問題を抱える集団のメンバーたちは辛い実生活(家庭や職場)から逃避し、逃避した集団の中で幸せな共同生活が送れたとしても、社会に迷惑をかけるのであれば、長続きしないということでしょう。
そうすると、実生活に戻ったとして、彼らの行き場は何処にあるのでしょう。
masahitotenma

masahitotenma