本作のテーマはファシズムなのか自由主義なのかというイデオロギーの相克にあるのだろうか。ストーリーの柱はそこにあると思う。しかし、いかなるイデオロギーであれ強固なイデオロギーの前では個人の思想というのは、時として全く無力化するものであるという恐ろしい哲学こそがテーマとしてふさわしいのではないかと思われる。
幼少時のトラウマから人生に虚無感を抱く主人公は、色の付いていないオリジナルの人間を表しているのかもしれない。
その人間がファシズムの手先となりかつての恩師と愛人を暗殺に追い込む姿とラストシーンの掌返しの姿を見ると軽い絶望感を覚えてしまう。
2013年か2014年に新宿紀伊國屋サザンシアターで観覧。
娯楽として観るには少々重たい作品なのかもしれないが、一見の価値はあると思う。
ヒロインのドミニク・サンダは好みのタイプ。