Kuuta

お茶漬の味のKuutaのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
3.9
皆さん書いてるけど、小津らしからぬ室内でのカメラの前後の移動。何なんだろう。不気味。

女4人が温泉に行って、夫婦に不和が生じる。年末に見た「ハッピーアワー」からの連想で鑑賞。米と味噌汁が調和して美味しいお茶漬けになるというよりは、夫の価値観に妻が屈服したように見えてしまい、ストーリーがどうもしっくりこなかった。

庶民と貴族、和風と洋風といった夫婦の生き方の違いが「立つ」「座る」の目線のズレとしてひたすら描かれている。両者が一緒に立たなければ、或いは座らなければ、互いの差異を「見る」事はできない。

夫は目線の上げ下げを何度も繰り返す。飛行機にすら乗る彼は恐らく、人の全身を見る事が出来ている。対する妻は自分で歩かずに車や電車で移動してばかり。彼女がいかに「夫を見ていなかったか」に気づかされる話。

視点の変更によって他者の思考を追体験する手法はとても映画的だ。不在となった夫の定位置に座る妻は、ようやく夫の視点を手にする。このシーンが最大のポイントだと思うが、あくまで引いて見せるのが上品。

競輪や歌舞伎でみんなが一方向を見ているときに、観客を観察するという視線の交差。夫の行くバーやパチンコは一方向を見つつ、自分について考える場。この時代の競輪や飛行機が見られるのはシンプルに貴重。

フレーム外から手が伸びてきて酒を注ぐとこ好き。77点。
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