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お茶漬の味のkiritoのレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
4.1
【深夜の台所】

『夫婦はこのお茶漬けの味なんだよ。』
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。
もう毎度毎度のことですが、魅了させてくれるじゃないですか!


最近、心が荒んでる時に観る映画は、絶対に小津作品と決めてます。
なぜか、彼の昭和中期?の香りを楽しむと心が広くなる気がするんですよね。


夫婦の茂吉と妙子。
妙子は何気ない日常に退屈していた。そこで、ちょくちょく嘘をついて友達と旅行にいったり、夫の茂吉の行動に腹を立てたり。
しかし、ある出来事で彼女は大切なことに気づき…


実は正直、この映画8割くらいの部分まで少しフラストレーションが溜まりました。
というのもこの妻の妙子の行動があまりにも勝手すぎることが原因です。


この時代にはまだ珍しかったんじゃないでしょうかね。妻の方が夫より強いという権力関係は。
妙子は友達と会話する時に夫のことを鈍臭い男だとバカにしたり、ご飯に味噌汁をかけて食べる茂吉に腹を立て10日間も口をきかない、謝っても許さない。
というように流石に酷すぎないか?という行動をやってのけます。
といってもこの行動こそが、最後のお茶漬けのワンシーンを活かしてしまうんですがw

対して、茂吉は怒らないタイプで、妙子の行動に気づいていてもなにも文句を言わずに黙々と会社で働いていた。
こちらの男性像も当時では珍しいかもしれませんね。


そして、味のある演技をするのはやはり、敬愛している笠智衆。
今回は無精髭を生やしパチンコ屋のオーナーをしてらっしゃり、歌も披露してくれました。満足満足。


妙子をみて見合いは嫌だという姪がこれまた日常的にいそうなキャラクターで相変わらず丁寧な人物像を描き出す小津さんには頭があがりません。


パチンコ、競馬、トンカツ、ラーメン。
劇中で出てくるものがついに時代の変化を表し始めました。
しかし、あえて戦争時代の仲間を登場させるなど、あの時代があったことを必ず作品の中に組み込んでいます。


最後の夜のお茶漬けのワンシーン。
この10分のためにみる価値のある作品だと僕は思いました。
妙子の感情の変化に特にご注目。
小津作品を見るたびに家族っていいな。夫婦っていいな。と思わされます。

今日もほっこりさせていただきました。

ネクタイの好みがいいとか、洋服の着こなしがどうとか。そんかことどうでもいいのよ。
男の頼もしさが大事なの。

※『いま、ウルグアイで何してらっしゃるのかな。』
この一言に全てが詰まってました。

2016.8.5
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