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お茶漬の味のワイCのネタバレレビュー・内容・結末

お茶漬の味(1952年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

あらすじ
お見合いをきっかけに結婚した夫婦の茂吉と妙子は育ちの違いからすれ違ってしまっている。妙子は姪の節子らと夫に黙って旅行に行くが茂吉は妻の本心を知りながらも何も言わない。お見合いに行きたくないという節子を茂吉がかくまったことに対して無理に見合いをしても自分たちのような愛のない夫婦ができると言ったことをきっかけに妙子が茂吉と口をきかなくなり、黙って家を出ていってしまう。その後茂吉はウルグアイに転勤になるがそれを妙子に言い出せずにいた。電報で転勤の事実を知った妙子だったが意地になって見送りのために空港に行こうとはしない。茂吉が空港を発ったあとも妙子は平然を装うが心の内では動揺していた。飛行機のトラブルで帰宅した茂吉に対して喜ぶ妙子に茂吉はお茶漬けが食べたいと言い出した。いままで夫が犬のえさのように食べると称して嫌っていたお茶漬けを2人で食べ妙子は初めてお茶漬けがおいしいと感じる。お互いの気持ちを伝えあい妙子は初めて夫の素朴な魅力に気づき心から愛し始めるようになる。
この作品のシナリオは第2次世界大戦中に完成しており、戦時中に公開する予定だったが戦時中に有閑マダムが贅沢をすることや出兵前の食事が質素なお茶漬けであるといった内容が受け入れられず完成には至らなかった。当時のシナリオでは有閑マダムが夫に黙って遊びに出かけていると夫の出兵が決まり慌てて帰宅し夫の頼もしさを再確認するという内容だった。

感想
現代のように妻が隠れて夫を茶化したりするシーンがあるように感じた。
パチンコの良さを語る際「大勢のなかで簡単に自分1人きりになれる」「そこにあるのは自分と玉だけだ。」「幸福な孤独感だ」って言っているところで戦時中の比喩があると考えた。この場合の玉は戦時中にシナリオを描いたときは銃弾のことを指していたのではないかと思った。またパチンコのシーンを含めた娯楽に日本国民が興じているシーンは当時の国民の文化を知るうえで重要なシーンであると同時に戦時中に書かれたシナリオではなかったシーンではないかと考えた。
茂吉がウルグアイに行く場面で飛行機の後ろ姿が移った後にファンファーレのような音楽とともに妻たちがハンカチを振るシーンがあった。このシーンが元のシナリオではハンカチではなく日の丸を振る親族とパレードを行う軍人達のシーンだったということが示唆されていると感じた。
物語の途中まで夫の考えに振り回されず自分が好きなように暮らしていた妙子だったが夫の海外勤務をきっかけに夫を尊敬する従順な妻になる。元のシナリオでは夫の出兵をきっかけに妻が夫の頼もしさを再確認するという内容だったため、出兵する夫とともに国に翻弄される女性像を小津は示したかったのではないのだろうかと考えた。元のシナリオで妙子は夫を使って間接的に国に翻弄される人物として描かれていたと推測されるが戦後書き直されたシナリオでは国に翻弄される夫とそれに順ずるが故に国にも翻弄される女性ではなくなり夫だけを慕い夫についていく女性として描かれていた。
未婚の節子がお見合いに行くことを強要されているシーンでも戦後戦中に関わらず女性は誰かに振り回されて生きなければならないということを示していると思った。
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