コルクボードに残った針は危ない

ダンサー・イン・ザ・ダークのコルクボードに残った針は危ないのレビュー・感想・評価

4.0
人間の心理としてこれ以上とない鞭の後にほんの少しの飴を与えることで、これ以上とない幸福感や感動を覚えるというものがある。
これは人間が相対評価を行う生き物ゆえの性質だが、理不尽な飴と鞭で永遠なる闇を表現した鬱映画がこの作品。

救いのないミュージカル鬱映画がこの作品のジャンルであるが、ほんとうに救いがなさすぎてしばらく生活に影響が出る。
視聴の際はそれ相応の覚悟と心持ちで見なければならない。生半可な気持ちで見るな。脳が壊れる。

ただ、闇へ落ちた先のさらに先の闇へ落ちた先に差し込む蚊取り線香のような光にこれ以上とない救いを感じるのは我々も主人公に感情移入し、耐えきれずに現実逃避をしている証拠である。
そんな闇へと誘う、魅惑の悪魔は主人公を演じるビョークによる功績が大きい。

ビョークは前衛的な音楽家として有名だが、演技がほんとうにすごい。
闇へと落ちていく主人公セルマが必死に足掻くもそれよりも強大な力で引きづりこまれてゆく演技は圧巻。
さらに劇中曲も自身が手がけており、囲い込みがすごい。

ちなみに劇中曲は非常に良いので視聴前に一度聴いていただきたい。見た後に聞くと純粋に聞けないから…

そんなビョークの演技力と監督のこだわりの演出、そして救いのない地獄を楽しもう…