映画漬廃人伊波興一

しとやかな獣の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

しとやかな獣(1962年製作の映画)
4.5
川島+新藤=最高級ピカレスクマジック 川島雄三「しとやかな獣」

1960年代の新藤兼人先生は脚本家としても映画監督としてもっとも旺盛かつ実験精神に富んだ時期でもあった気がします。
そんな時期の新藤がこれまた川島雄三なる怪物と手を組んだらどうなるか?
生れてきたのは類を見ないピカレスク。
衝撃でしたね。
何しろ舞台は95分間、団地の中。そこに人が出たり入ったり。ド下手な演出家なら開幕15分でアクビが出そうですが、何しろアメリカ映画のマシンガントークと遜色ない言葉の攻防戦、そして次々効果的にスタイリッシュに切り替わるアングル。
そして伊藤雄之助や若尾文子、川畑愛光、山岡久乃、浜田ゆう子などの不気味な存在感が加わりまさに脚本と演出の匠技。
一気に観せてくれます。

もしかしたら邪道かつ讃えるべき映画じゃないかもしれませんが2000年代に入った日本映画がたかだか10年も経たないうちに古びた印象を抱きがちになるのがあまりに多い気がするものですから50年以上前の日本映画のケレンに魅せられてしまうのです。