旅するランナー

ファウストの旅するランナーのレビュー・感想・評価

ファウスト(1926年製作の映画)
3.9
【F·W·ムルナウの世界/キネピアノ@テアトル梅田】

ドイツ・サイレント映画の巨匠フリードリヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ監督作品が、ピアノ生演奏付きで4夜連続上映されています。

光と影を見事に対比させた美しい映像に釘付けになります。
気を抜くと、ピアノ伴奏が耳に入ってこない。
セットや特殊効果にお金かかってる感あり。
映画会社ウーファ社史上最高額の予算を投じて作られた(翌年「メトロポリス」に抜かれる)。
製作費は200万ライヒスマルク(現在の価値に換算すると20億円を優に超えます)。
でも、興行収入はその半分しかなかったようです。

それにしても、ゲーテを読んだことはあるんですけど、こんなに悲惨な話だったかなぁ。
ペストが蔓延する絶望と閉塞感漂う世界で、人間の生きる糧となるものは何か?
無垢な娘さんグレートヒェンが、とんでもないことに...
助けを求めるあの叫び声は、夢に出てきそうです。

結局神を信じることと、必ず最後に愛は勝つ。
でも、お茶目なところもある悪魔もやっぱり魅力的なんですよね。
結局欲望には勝てやしない。

ちなみに、悪魔メフィストを演じたエミール·ヤニングスは、数年後、第1回(1929年)アカデミー賞主演男優賞を受賞する俳優さんです。
鳥飼りょうさんによる抑揚の取れたピアノ演奏で劇的に楽しめました。
ラストの盛り上がりはワーグナーを彷彿とさせました。