Toineの感想文

反撥のToineの感想文のレビュー・感想・評価

反撥(1964年製作の映画)
4.6
【美しき精神崩壊観察ムービー】
ポランスキー監督作品で1番好き!
監督の映画は個人的に初期作品がたまらんです。

原題の"repulsion"は嫌悪や撃退、押し付けること、打ったり叩くこと、引っ張ること。
という意味だそうで、この作品にぴったり合った題名だなと思いました。

カトリーヌ・ドヌーヴ様演じるキャロルさんという女性の精神が日を追うごとに少しずつ崩壊して行く過程を撮った映画です。

バチバチにキメたカメラワークと演出に感動いたしました。

オープニングカットでキャロルさんの不安げな瞳をクローズアップで映し少しずつ引いて行き、エンドで彼女の子供時代に撮られた写真の瞳を少しずつ寄りで映していく。

彼女の子供の頃の写真には。
一緒に写る家族は皆、寄り添って微笑みカメラ目線で写っているのに、キャロルさんだけ家族から距離を取り虚ろな眼差して明後日の方向を見ている。
彼女は幼少期から正気と狂気の狭間に居たのでしょう。

ウサギとじゃがいもが腐って行く過程とキャロルさんが狂って行く過程を並行させて物語を進めていく。

チャラ男のコリンさんがキャロルさんの家に凸した場面で、キャロルさんの後ろにコリンさんが居て、その後ろの開け放った玄関の扉の先に佇む野次馬のお隣さん。
奥行きのある完璧な人物配置。

男性の登場人物全員が身勝手で自己中心的なのが、ポランスキー監督の中の何かの暗喩な気がします。

他にも良いシーンばかりで書ききれないです。
劇伴(というより効果音)も実験的で良きです。

物語の大半が自宅マンションの室内ワンシチュエーションなのに、最後まで中だるみする事ないのも凄いと思いました。