彦次郎

007/カジノ・ロワイヤルの彦次郎のレビュー・感想・評価

007/カジノ・ロワイヤル(1967年製作の映画)
3.3
引退していた元MI6諜報員ジェームズ・ボンド卿が依頼により国際犯罪組織スメルシュの陰謀を阻止すべく珍作戦を決行するコメディ。
タイトルからダニエル・クレイグ初登場の007シリーズと勘違いする方が続出しそうですがアチラは『007/カジノ・ロワイヤル』。こちらは正式には『007/カジノロワイヤル』という詐欺商法みたいになっています。制作の経緯は複雑ですが本作の方が1967年という時期に作られております。
番外編ともいえる『ネバーセイ・ネバーアゲイン』はショーン・コネリーが主演ですが本作は彼にギャラをふっかけられ出演を見送ったことで当時の豪華俳優総出演というお祭り的な作品になっています(結果的にはコネリーを雇った方が安く済んだくらいギャラがかかった)。なお『007 ドクター・ノオ』のボンドガールはメイン枠で出演している模様。
既にボンドが引退していて伝説の女スパイであるマタ・ハリとの間に娘がいたり本家007シリーズを揶揄するように色仕掛けの耐性を訓練させようとしたりと異色の設定。話の方もMが殺されて複数のジェームズ・ボンドと007を出すという大胆不敵すぎる作戦は当時いや現代(2023年10月時点)でもかなり尖っているといえます。とはいえ監督も5人で豪華出演者多数という美点が寧ろ弱点にもなるのは世の常。話にまとまりがなく自分には退屈に感じてしまいました。ただル・シフルとの勝負は『007/カジノ・ロワイヤル』同様に楽しめました。ル・シフルを演じたのは伝説的俳優オーソン・ウェルズで本作でもル・シフルがマジックを操るくだり(オーソン・ウェルズはマジック愛好家)は本人とのオーバーラップで多分ご本人も楽しんで演じられたのではと思ってしまいました。
ラスボスの目的がしょーもなかったりするコメディ映画ではありますがジェームズ・ボンド卿が美女からのカーチェイスであっさりと殺害するあたり軽妙洒脱にみえて敵には非情というスパイとしての真価がキチンと描かれているのが良かったです。

余談ですが国民的に有名な作品『ルパン三世』は007に影響されて作られたものですが初登場は1967年8月、本作の日本公開は1967年12月(初公開はイギリスで1967年4月)という奇縁。ドタバタしながらも死人がキッチリ出ているのは本作の影響も少しあるのではと思った次第です。
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