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風が吹くときのsoloのネタバレレビュー・内容・結末

風が吹くとき(1986年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

とりあえず1回観ておきたくて。
あらゆる鬱アニメ特集に出てくるのであらすじはもはや何周もお勉強済。
鬱作品として視聴しましたが、鬱さ的にはやはりアニメーションがかわいすぎるのでそこまで…あと音楽とか画質的になんか謎の無関係なノスタルジー感じる。いや内容はえげつないんだけどね。良くも悪くも意味がわかると怖い話感が強いというか。
ただ序盤から終盤の落差は結構ある。そこはおぉ…てなった。
本当にただただふつうの老夫婦なんだわ、このふたり。三度も大戦を経験した割に、えらいこと国を信用しきってるというか妄信してる旦那とあんまり政治とか興味ないですな奥さん。
「うわ、爆弾落ちた…やべーーー」となりながらも事態の深刻さを理解できてない(知識が足りない、というか理解する能力を奪われている?)ため、なんか体調やばいと感じながらも普段どおりの日常を過ごそうとするふたりに広島育ちの自分からしたらうわー…うわー…な感じです。
正直すごいふたりが愚かに見えるんだけど、いや、必ずしもそうじゃないかもなぁと。
仮にこのふたりが核戦争リテラシーが高くて危機意識もばりばりだったとしても結局結末は同じだったんじゃないかなと思った。結局家中のドアで核シェルター作るしかできなくないか。逃げるにしてもどこへ?だし。まず戦争の前に我々はこんなに無力なのかと。
あとこのふたり、途中からは事態の深刻さが解らないんじゃなくて解らないようにしていた、というか普段の生活を形だけでもなぞることでパニックにならないようにしていたのでは…「大丈夫、すぐに国が助けに来てくれるさ」と作中旦那(の、もはやひとり語り)でずっと妻を励まし続けている。
その内容はもはや根拠のないもはや願望なのでナニイッテンダーぐらいにしか頭に入ってこないけれど、同じような事態になったときに自分も目の前にいる相手に掛けてあげられる言葉なんてそれくらいしかないという考えに至り、うーーーん……俺もこうなったらゆるやかに死ぬしかないんかと。
戦争というクソデカ現実の前に静かに絶望。
\ギャー!/とか\わー!/とか目に見える混乱やパニック描写がないぶんのリアリティによるものか…考える余白があったというか…

作中印象的だった夫婦のセリフに、過去の大戦を振り返り
「あの頃の戦争はよかった、口ひげのスターリン…〇〇〇の〇〇〇…敵も皆親しみやすさがあった」(うろ覚え)的なのがある。

戦争に良し悪しもないんだろうけど、たしかに過去の戦争にはわかりやすい敵がいて、目的があって、英雄がいて等アイコンがあったぶんまだそういう時代として良い面も悪い面もあったと認識できたのかもしれない。
現代の戦争はもはや複雑すぎて何と何の為に戦っているかもはやわからん。わからんのにどこからかの爆撃があってなんかめっちゃ死ぬし、生活のすべてが急に瓦礫の山になる。
ある日突然出自のよくわからん爆弾が落ちて、すべてが壊されたあと、原因も悪者もよくわからんままただ殺されていく…っていうのはもはや戦争ですらないんじゃないか。
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