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K-20 (TWENTY) 怪人二十面相・伝のtakのレビュー・感想・評価

2.8
北村想の「怪人二十面相・伝」を原作にした映画化作品。とはいえ、第二次世界大戦を回避したという架空の都”帝都”を舞台にしたものに設定を大幅に改変しているとか。時代背景まで変えることで、映画版だけの大胆なストーリーに持って行ける・・というのが狙いだったんだろうか。これにはどうも賛否あるようだ。

僕は佐藤嗣麻子監督のデビュー作「エコエコアザラク」が実は大好きだ。若手女優陣の大熱演もあり、見応えのある血みどろホラー。原作のおどろおどろしさとは違うけど、学園ホラーとしての面白さは十分だった。それからも佐藤監督は有名な元ネタの映画化を手がけることになる。「ゴースト ニューヨークの幻」の翻案、実写版「宇宙戦艦ヤマト」の脚本・・・。正直なところ、僕は原作のイメージをぶっ壊す度胸をお持ちの方だと思っている。その分、熱心な原作ファンの反感を買うこともあるだろう。

この「K-20 怪人二十面相・伝」も然り。原作からいただいたのは、サーカスの団員が新たな二十面相となる(?)という筋書きくらい。映画では、サーカスの団員平吉(金城武)が二十面相に仕立て上げられる話になっている。自分を陥れた真犯人を突き止めるべく、持ち前の身体能力と泥棒長屋の人々のバックアップで、事件に立ち向かう。そして名探偵明智小五郎や小林少年とも対決することに。しかも真犯人は驚くべき人物!確かにこれは驚かされるけど、江戸川乱歩のオリジナルをこよなく愛する世代からは「そりゃねーよっ!」という声が聞こえそうだ。僕も観ていて「えっ?いいの?」と思わず口にしてしまった。うーん、乱歩を読破した僕の母がこの映画を観たら、きっと激怒するに違いあるまい。

だが映画全体の雰囲気は素晴らしい。北九州市の西日本工業倶楽部や旧門司三井倶楽部、上野海運ビルなど大正時代に建築されたレトロな建物を使ったロケーションの見事なこと。ワイヤーアクションはもちろん、どんな地形や障害でも己の体で乗り越えるパルクールという運動方法を用いたアクション場面はなかなか他の映画では観られない。地図に一本の線を引いてその通りに赤煉瓦の建物によじ登る場面はなかなか面白い。松たか子演ずる世間知らずのお嬢様、発明家の泥棒を演ずる國村隼、仲村トオル、嶋田久作など納得できるキャスティング。
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