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ヒトラー 〜最期の12日間〜のahddamsのネタバレレビュー・内容・結末

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

パロディ「総統閣下シリーズ」でも有名な本作。

「彼の敵は世界」のキャッチフレーズを知った時から頭の片隅に引っかかっていた。
だが「世界」と言っておきながら99.9%本国ドイツ、ベルリンしか出てこない。第二次世界大戦下のドイツ・ナチスと聞くと先ずはユダヤ人大量虐殺等、彼らの所業がヒットすることと思う。
本作ではそれには一切触れず、総統を支持した末にベルリン市民、そして側近たちの受難がフォーカスされている。

心して観なければならない。
負傷兵や落ち延びた市民が一ヶ所に集められたさまはまさに阿鼻叫喚地獄。
それとは対照的に二度とかなわない夢や現実逃避に溺れる総統地下壕の描写も別の意味で恐怖だった。自分がもしあの場にいたらきっと同じくらい正気ではいられないことだろう。
憎むべき側近の一人ですら自分の家族と心中を図った時はショックで絶句するしかなかった。

単純な印象だが、劇中に登場するベルリン市民が同時期の日本人と非常に重なった。
もはや少年・少女兵に仕上げられたヒトラー・ユーゲントの子供たちは「最後の一兵になっても闘う」と意地を張って見せ、市民は空襲から逃げまどい、終戦後人々からはまるで生気が感じられない。
ヒトラーをはじめ側近は「自分たちを支持した市民が悪い」と開き直っていたけど、きっと当時の日本政府閣僚も同じことを考えていたんだろうな。

鑑賞後、ヒトラー内閣の顔写真を見たが驚くほどほぼ全員そっくりさんである。
特にゲッペルス宣伝相は写真を見ただけで冷徹さが伝わってくるが、役者の方もソロで映っただけで背筋が凍る。彼の一家も生き写しかと思うくらい瓜二つだった。(妻とは口をきかないんだなーと思っていたらやっぱり本当になさぬ仲だった)
レビューの多くは、本作のヒトラーは独裁者というよりもただの心の弱い人間だったと書いている。しかしその心の弱い人間が自国を崩壊に追い込んでもなお夢を見続けている様が私には只々恐ろしい。

元を知った後も果たしてパロディを見て笑えるだろうか。
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