・戦況の悪化からドイツ降伏までを描く。タイトルに「ヒトラー」が使われているが、どちらかというと「ドイツが降伏するまでのナチ党群像劇」と言った方がいいだろう。故に、多数の登場人物の思惑、それぞれの立場での視点が複雑に織り込まれている。ヒトラーがすでに無力になっていること、各師団は壊滅状態になっていること、市街戦にもつれ込み多くの人命が失われていることに気づきながらも、忠誠を理由に降伏はしない（できない）。ヒトラーの死後、彼の腰巾着たるゲッベルスも同じ道をたどり、ベルリン地区の司令官であったヴァイトリングによって停戦放送がなされることで、ようやく戦いが終結する。勝つまで戦いたい人。ナチスとは関わるなという人。忠誠を誓い自決する人。自決を蔑む人。戦時下という「現象」を描いた傑作だ。そして最近『日本の一番長い日』を見たが、日本と状況がほぼ同じで面食らった。ここから約四か月後に日本は終戦した。
・かの有名な「総統閣下激おこシリーズ」の元ネタだったとは。
・私は集中すると冬眠中のリスのように身体の機能が省エネになるのだが、見終わった後体が冷え切っていることに気づいた。そして残ったカップスープが凝固していた。ヒトラーを演じきったブルーノ・ガンツに拍手。役者の神髄を見せてもらったように思う。ほんとうにありがとう。
