青山

柔らかい殻の青山のレビュー・感想・評価

柔らかい殻(1990年製作の映画)
3.9

千街晶之氏が全映画でのオールタイムベストに挙げておられたので気になってたんですが、運良くイマジカでやったので。

とある田舎の村。主人公はいたずらっ子の少年セス。彼はある日友達と3人で未亡人にカエル爆弾を仕掛けます。その件で未亡人の家に謝りに行くことになったセスは、彼女が夫が自殺した話などをするのに怯え、彼女を吸血鬼だと思い込みます。
本作は、そんな少年セスの目から大人の世界を描いた、主観ではホラーミステリー、客観では田舎の厭な人間ドラマという風変わりな映画です。

どうも監督の本業は画家らしく、この作品の映像も絵画的な感じ。まさに絵に描いたような一種人工的な構図の取り方と、明るいのに不穏さや退廃を感じさせる色遣いから、他では見たことのない独特の雰囲気を醸し出しています。
特に吸血鬼おばさんの家へと向かうシーンの左右対称の美しさや、火事のシーン、そしてもちろんラストシーンなんかはかなり印象的で癖になっちゃいます。この映像美だけで傑作と言い切れますね。

そしてお話は暗いです。
生々しい大人同士の関係性が、子供の目を通すことで現実離れして見えてしまうというのは面白いですが、全て分かってる大人の観客からするといたたまれない気分になります。やっぱり狭い場所はこういう意味ではダメですね。恐ろしい。
しかし色んなことが起こるので、ついつい気になって厭だと思いながらも見てしまう魔力があります。恐ろしい。
こんなトラウマを植え付けられた彼が今後どんな人間になるのかと思うとそれも恐ろしいですね。
恐ろしくも美しいヘンテコカルトムービーでした。イマジカBSさんこんなマイナー作品やってくれてありがとう😊
青山

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