ベンゼマ

ターミナルのベンゼマのネタバレレビュー・内容・結末

ターミナル(2004年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

前半はかなり面白かったが、後半は無理のある展開が多くて微妙だった。
総評としてはまあまあ楽しめた、といったところ。

前半について、まず設定が秀逸。
戦争により国が崩壊して「法の隙間に落ちた男」(作中の表現そのまま)になってしまい、空港に住むことを余儀なくされた主人公の生活を書く、というのがおもしろい。
空港に住むという状況もおもしろいし、あまり強く強調されてはいないが、国がない、身分がないとはどういうことなのかについて考えさせられた。

その後の中盤までの展開もよくできていた。
返却されていないレンタルカートを集めて金を稼ぐことを覚え、空港の職員と奇妙な友情を育み、空港のボスに目の敵にされ、そんな中起きた事件を解決して一躍ヒーローになり…。
コメディとしてもドラマ的な意味でもよくできていて楽しめた。
一番好きな部分はカートを大量に集めて返却するところ。
コメディなんてあれくらい大げさにやったほうが笑えるんだなと学べた。


逆に後半は微妙だった。
まずアメリア周りのエピソードがあんまりうまくできていない。
ディナーでのポケベルについて会話したところくらいで、アメリアなんかヘラってるというか地雷臭しないか?と思っていたが、主人公の滞在理由についてのよくわからん説明に納得してしまったり、そうと思えば最後一方的に別れを告げたり、こいつ何考えてるのかまるでわからん、という感想になってしまった。
あんなにすぐ、しかも「運命」とかいうよくわからん理由で離れていくんだったらはじめからキスするなや。

アメリアには、主人公の「待つ」というスタンスを強調する役割と、最後にチケットを渡して主人公がNYに出ていくきっかけをつくる役割、あと単純に物語を盛り上げる恋愛の役割が与えられているのだと思う。
それ自体はプロットとして問題ないと思うのだが、その内容が微妙だったかな。
「運命」もそうだし「待つ」もそうだけど、この映画の恋愛については言葉に具体性が伴っていなくて雰囲気だけで作られてるなあという印象を持ってしまった。


あとは最後のNYニューヨーク周りに関してもいまいち。
そもそも入国許可下りなくて揉めてるが、戦争が解決したのなら入国許可下りない場合は一回戻ってもう一回来たらええやんと思ってしまう。
この空港がどうしても無理なら別の空港使うとかさ。
つまり入国できるかどうかという問題は戦争が解決した時点で、「一回帰る」という簡単な(金銭はかかるが)アクションで解決するレベルまでスケールが小さくなってしまっている。

にもかかわらずその小さな問題に対してじいちゃんが飛行機に立ち向かったり(しかも逮捕までかかっている)、「俺たちはファミリーなんだ」って大げさに言ったり、空港中の人間が集まって盛り上がったりしているので、どうしても見ている方は冷めてしまうというか違和感が勝つ。
このへんは悪いアメリカ映画の感動の押し売りを見ているような気にさせられて、正直見るのが少し苦痛だった。


以上、いつもレビューを書くと悪いところばかり詳しく書いてしまうのだが、別に悪い映画ではなくそこそこ楽しめた。
惜しむらくは前半の印象がかなりよかっただけに、後半の失速が気になってしまったかなという印象でした。