ちろる

イントゥ・ザ・ワイルドのちろるのレビュー・感想・評価

イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)
3.8
久々に人に勧めたくなる映画に出会った。

ただのロードムービーなのかと思っていたら実話で、泣かせることなく、でも確実に胸の奥に飛び込んでくる物語。
恵まれた家庭環境、優れた頭脳。
将来の不安の何もない若者が選んだ道。
お金も、カードも、IDも、そして親も捨てて身一つでアラスカへと旅立つ。
嘘と虚勢の鎧のなかで、自分という姿が見えなくなって、本当の自分を探しに行く旅。
この手の物語は多いし、「モータサイクルダイアリーズ」のゲバラにしかり、大体は主人公に共感して物語にどっぷりはまっていくのだがこの映画は違った。
「このままでいいのか?」という自分の現状への疑問と限界まで自身を置いてみたいという思いはものすごく分かるのに、何だか目に見えない主人公の頑なで、頑固
固な姿勢に疑問と反感すら覚えるのだ。
映画に多くある旅をする若者は始めから柔軟的。
旅で出会う人々の生き様に学びながら、自分も成長していく。
でも、彼は・・・・
でも、だからこそこの映画の面白いところ。
世界を、文明を、人を心から信じられず見えない壁で遮断して、
全く人の居ないアラスカに向かう。
自分自身ただ一人と向き合うためだけに。

ラストを観て腑に落ちない人も居るかもしれない。
でもそれがゆるぎない真実だった。

私はあのラストは必ずしも残念なものではないと思う。
彼が最後に向き合ったのは自分自身ではなくて本当の「幸せ」とは・・。

生き方を、そして死に方を考えさせられる映画でした。
ちろる

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