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かぞくのくにのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

かぞくのくに(2012年製作の映画)
3.8
在日コリアン2世(「朝鮮」籍)のヤン・ヨンヒ(梁英姫:1964.11.11生まれ)脚本・監督による初のフィクションで、ドキュメンタリー「ディア・ピョンヤン Dear Pyongyang」「愛しきソナ」に続く第3作。
イメージ・ソングは、ビリー・バンバンによる1969年のヒット曲「白いブランコ」。
(2012、100分)

1997年。
70年代に帰国事業で北朝鮮に移住した兄ソンホが、脳にある腫瘍の治療のため、3か月間だけだが、25年ぶりに日本に帰国することになり、日本で暮らす妹のリエや家族やかつての同級生たちは再会を喜ぶ。
しかし、ソンホには監視役の見知らぬ男が同伴し、ソンホはある使命を託されていた。
やがて、家族間の本質的な溝が顕在化する中、突然ピョンヤンからの帰国命令が下る…。

①在日コリアン家族
・ソンホの妹、リエ (安藤サクラ):日本語学校の教師。
・父/アボジ( 津嘉山正種):朝鮮総連の東京副支部長。
・母/オモニ (宮崎美子):喫茶店を営む。
・叔父/サムチョン、テジョ ( 諏訪太朗:アボジと思想が違う。

②北朝鮮在住
・リエの兄/オッパ、ソンホ( 井浦新):日本に生まれるが、当時「理想郷」と呼ばれた北朝鮮に16歳の時に「帰国」。病気の治療のため、日本に(非公式に)滞在を許される。
・ヤン同志(ヤン・イクチュン):監視役。妻子がいる。

③ソンホの日本時代の同級生
・スニ (京野ことみ):医者と結婚。
・チョリ - 省吾(ポカスカジャン):オカマ
・ホンギ(大森立嗣)
・ジュノ( 村上淳)

④その他
・医師 (吉岡睦雄)

~冒頭字幕~
「1959年から20数年にわたり
約9万人以上の在日コリアンが
北朝鮮へ移住した。
「帰国者」と呼ばれる
彼らが日本へ戻ることは困難を極めている。」

「あなたの嫌いなあの国で、お兄さんも私も生きているんです。死ぬまで生きるんです。」

「もし、あの時…
もしは考えない。」

「決定は常に絶対です。」

「あの国では考えずに、ただ従うだけだ。考えると頭かまおかしくなるんだ。考えるとしたら、どうやって生き抜いて行くか、それだけだ。後は思考を停止させる。」

「お前の人生だぞ。誰にも指図されないで、いいか、お前の好きなところへ行っていいから。」

北朝鮮を「理想郷」と思い10代の息子3人を北に「帰国」させた韓国済州島(チェジュド)出身の父と母のもと、日本で育った在住コリアン二世(北朝鮮籍)のヤン・ヨンヒ。
兄たちは日本への入国を許されない。一方、何度か北に渡航したヤン・ヨンヒは、一作目の作品発表後に北朝鮮から入国禁止処分を受ける。そのため、それ以後兄たちと会うことは困難になった。
朝鮮総連の幹部で息子たちを北に送り出し厳しい生活を強いることになった父と母の心情。
北に送られ貧困と厳しい思想統制下で生きることを余儀なくされた兄たちの苦悩。
そして、6歳の時に兄たちと引き離され、家族としての愛情を感じながらも父親たちとは違う思想を持つ妹の葛藤。
そんな複雑な想いをより多くの人たちに知ってほしいと、ヤン・ヨンヒは今回はドキュメンタリーではなくフィクションにして作品を発表した。
ラストは、「スーツケース」に想いを込めます。
彼女の作品は、私たち日本人にはどれも必見です。
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