tomひで

お葬式のtomひでのレビュー・感想・評価

お葬式(1984年製作の映画)
3.0
午前十時の映画祭で「お葬式」4K版を鑑賞。「お葬式」を観るのは3回目。1984年公開の映画なのでほぼ40年前の映画。菅井きん、めちゃくちゃ良かった。

久しぶりに観たが日本人の葬式の形が少しずつ変化している事も意識させられた。自分もこれまでに何度か葬式には参列したが、大抵は葬儀会社の葬儀会場で行われ、その人の自宅などで行われる葬式に参列したのは子供の時にしかない。マンションでは出来ないとか色々理由はあるだろうが、この映画のような形の葬式を経験する事ってほぼ無いような…。田舎だとあるのかな…。

だからこの映画の中に出てくる、正座して足が痛くなる経験とか、ご近所さんが帰らなくて困るとか、僧侶との雑談とか、昔の葬式でありがちな事が現在ではあまり経験できなくなっていて、その経験からくるこの映画への同調の笑いが少なくなってしまったような感じもする。

中盤で展開されるセックスシーン、やはり違和感を感じる。「死」の反対を意識させるその究極が「性」であるのかもしれないが、この映画は「葬式」には向き合っていても、「死」には向き合っていないので、この映画の中でのズレ、異物感を感じた。特に大木のブランコに乗る宮本信子の隠喩インサートカットの繰り返しは…(笑)

それでも映画後半の菅井きんの挨拶はとてもいいシーン。それまでの全ての遊びを映画に昇華させる力がある。

あとこの映画はATG製作だったんだな。低予算で映画を作る功罪はあったと思うが、日本のメジャー映画会社では創られない、作家の映画を世に出してきた功績はとても大きい。当時の映画賞を総なめにしたこの映画だが、低予算で監督が自宅を抵当に入れ借金して作られた映画だったというのも色々考えさせられる。

「俺は春死ぬ事にしよう。俺が焼かれる間、外は花吹雪…いいぞ」
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