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東京物語 4Kデジタル修復版のtomひでのレビュー・感想・評価

東京物語 4Kデジタル修復版(1953年製作の映画)
4.0
2023年の東京国際映画祭でチケット完売で観られなかった「東京物語4K修復版」がNHKBS4Kで放送されたので鑑賞。流石の4K修復版、アマゾンプライムの汚い「東京物語」とは別作品になっている(笑)

「東京物語」を観るのは今回で3回目。久しぶりに観直したが、やはり小津独自の画面作り、芝居の間合い、独特の映画のリズムがとても気持ちいい。ずっとずっと観ていたくなる。テーマ曲もいいな。

バストショットを撮る時にそれぞれ男と女で撮影距離とレンズのミリ数が厳格に決まっている映画監督って…小津だけでしょ(笑)そしてどんなに感情が高ぶるシーンでも小津がバストサイズより寄る事はない。こんな映画監督は他にいない(笑)

映画中盤、小道具の団扇の使い方とかとても面白い。東京観光から帰った紀子(原節子)が暑さを気遣って自分ではなく周吉(笠智衆)を扇ぐカットから、志げ(杉村春子)のカットを挟んで熱海の笠智衆まで、気遣いと自身の気持ちの方向を団扇を扇ぐ方向に重ね合わせているのとか本当に巧い。志げのだらしなく自分を扇ぐカット、紀子との落差で思わず笑ってしまう。

映画終盤、葬儀後の原節子と香川京子のシーンと原節子と笠智衆の連続シーンはめちゃくちゃいいシーン。世代間ごとのそれぞれの考え方が否定肯定なく填め込まれていて、この映画を観る観客の年代ごとに違った思いが持てる巧い作り方。時代を超えて何度も繰り返し観る事が出来る。

身動きが取りづらそうな小津映画のなかでの杉村春子の演技、その自由感って凄いな。小津の信頼感が伺える。笠智衆がこの撮影当時49歳なのにも驚いた(笑)

喪服を準備して尾道に帰る志げと喪服を準備せずに帰る紀子…自分はどっちだろう。
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