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お葬式のsatoshiのレビュー・感想・評価

お葬式(1984年製作の映画)
4.3
 伊丹十三監督第一作。自身のお葬式の体験をもとに脚本を書いたそうで、葬式の一連の騒動をユーモアとペーソスを交えながら描いている作品でした。

 この映画の素晴らしいところは、「葬式」という、一種の儀式を、きちんとしたエンターテイメントとして見せている点です。並の腕では淡々とした退屈な映画になっていると思います。また、葬式模様もリアルです。口うるさい親戚とか、死者を悼むというより宴会気分な人とか、本気で死者を悼む人とか、現実にいそうな人ばかりが出てきます。そして、死者にゆかりのある人が集まって話をすることで、死者の人となりが見えてくるところなど、何ともリアリティがあります。

 このリアルな葬式模様を、本作は基本的にユーモラスに描いています。なので、時々笑えるシーンなども見られます。しかし、このユーモアの間に、きっちりペーソスを入れてくるのです。それは死者という、もう二度と会えない存在に対する哀しみです。中盤までは、話の中で少し出る程度でしたが、ラストの菅井きんの台詞でそれが顕在化します。そこで観客は、夫を亡くした彼女は、もう共に寄り添って生きる人がいないという事を再認識するのです。そして、最後に山崎努と宮本信子の2人を、夫を亡くした菅井きんと対比的に見せ、共にいられることのありがたさを感じさせるのです。そしてエンドロールの表情がまた喪失感があっていいです。

 こうして見ると、本作は「葬式」をテーマにして、人が共に生きることの良さを伝えてくる映画だったのかなと思います。

 また、俳優さんがすごい。名優ばかりですし、意外な人も出ていたりします。黒澤清と井上陽水は驚きました。

 後、伊丹十三、中々の変態ですね。中盤のアレを見て確信しました。まさかアレを丸太を横にこぐことで表現するなんて。正直脱帽しましたし、呆れました。しかもその時の宮本信子の顔がまた恐ろしい・・・。まさか実体験じゃないだろうな。
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