ポンコツ娘萌え萌え同盟

死神の谷/死滅の谷のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)
4.0
フリッツ・ラングといえば犯罪・サスペンス映画を多く描けた印象に対して、『死滅の谷』は愛と死の対立だった。サスペンス自体は本編にあるが。
死神と婚前に恋人を喪った娘は、
『すでに短い蠟燭、これから死の宿命に3つの魂の物語の内に一つでも救出できれば彼氏の命』を戻すと賭けを始めた。

愛と死を作品の中で一篇ずつ物語で描いてくのは個人的には手塚治虫の『アポロの歌』を彷彿した。
ただあっちが性と愛そして生死ならば、『死神の谷』の三篇は一貫して宗教やら権力やら死の魔の手にある恋人たちは無慈悲にも神が定めた死の宿命の前に強い愛は勝るか?の命題にある。
ただ深い愛は時として狂気に走る部分もある。しかしこの3篇を通したあとで終盤の真逆の立場で彼女はどう選択するか?というのが本作における重要だと思う。命題の洞察よりもむしろ思考実験的だ。

内容自体は重い物語ではあるけど流石に中国パートはコミカルというか面白おかしくて笑ってしまった。
中国パートはなんというか魔術使ったり変身させたりと急に摩訶不可思議さ満開な世界観でぶっ飛んでる。決して明るい話ではないが正直観ていて面白かった。
ただそれだけじゃなくスッと多くの魂がやってくる描写もいいし、
何よりそれぞれ命を蠟燭として、蝋燭が多く刺さってる部屋の美術よ。