ミシンそば

ビッグ・アメリカンのミシンそばのレビュー・感想・評価

ビッグ・アメリカン(1976年製作の映画)
2.8
ベルリン国際映画祭の金熊賞として観ても、アルトマン作品として観ても、明確に下位に位置する作品だと思う。
表面だけの華美さと内面の醜さ、バッファロー・ビルの承認欲求の見苦しさだけが際立つ。
アルトマンのことだから、そう言う様を意図的に、より下劣に描いているのだろうが、それにしたって…って感じはする。
いや、分かるよ。これは徹底しなければ意味がないジャンルだってのは分かるし、そもそもアルトマン作品自体が、自分に合わないのもある程度分かってるが。

「ビッグ・アメリカン」って邦題からして見事だ。
わちゃわちゃ長々と語る原題よりも、虚栄とグロテスクを煮詰めた端的に示せている。
さっきも言ったが、バッファロー・ビルの承認欲求モンスター振り、それと19世紀相応のレイシズムを、グロテスクに描き出すのがこの映画の全てだ。
ポール・ニューマン演じるビルは見てくれはいいが差別が当たり前だった時代にありふれていた凡庸なカス共と何ら変わらず、自分が観てきたニューマンの中で一番カッコ悪かった。
字幕ではやんわり表現してるが、先住民のことを「Boy」と敬意を込めない呼び方をする場面も多々あり、美談などで覆い隠そうが「これが大多数だったことだろうよ」と言い放って来るところはまさにアルトマンだ。

イェジー・カヴァレロヴィチらは何を思ってこれに金熊を…?