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モーガン プロトタイプ L-9のMikiMickleのレビュー・感想・評価

モーガン プロトタイプ L-9(2016年製作の映画)
3.5
深い森の奥のある施設。そこで研究されていたのは、人工生命体の試作品L-9。名前はモーガン。彼女は、生まれてから5年しか経っていないものの、急激な成長により見た目も知能もティーンエイジャーであった。ある時、彼女が博士の目を串刺しにし重症を負わす事故が起きる。
研究を進めている本社の危機管理コンサルタントのリーがその調査に向かう。
長年その研究に心身込めて携わってきた研究者たちは、モーガンの擁護にまわる。あの事故はモーガンのせいではないと。
モーガンは人工生命体とは思えないほど、人間味のある少女であった。
しかし、完璧であったその人工生命体モーガンが……

内容的とシチュエーション的に『エクスマキナ』と比べられる事が多いこの作品。私はそれとは全く非なるものだと思っています。あれは“人工知能”の無機物。この映画は“人工生命体”。機械と生命は違う。

生まれた時から愛情を受け、自然を感じながら成長していったモーガン。
前半では、彼女の人間味が現されている。突然隔離されてしまったガラス越しに対面するモーガンとリー。そこに反射する二人の姿は相手と重なりあうも、会社の仕事に従順で感情を表さないリーと、悲しみにくれるモーガンとを対比させる。良い演出だと思います。
閉じ込められた鬱憤と外への欲望、怒りと爆発、その行為への後悔…まさにティーンエイジャーの悩みそのものであります。

が、しかし、後半で展開が変わっていきます。
予告にもある通り、このモーガンは反旗を翻します。
SFサスペンスではあるのだけれど、アクションが多様に出てきます。
リーを演じるのは、『ミレニアム』のハリウッド版『ドラゴンタトゥーの女』でかっこいいリスベットを演じたルーニー・マーラの姉であるケイト・マーラ。ぴったりとしたショートカット、パンツスーツ、クールな表情でモーガンと対峙します。

モーガンを演じるのはアニャ・テイラー=ジョイ。離れた目のバランスは違和感を覚え、色素の薄いメイク(メイクだと鮮明にわかるのが残念だけど)は薄気味悪さも感じます。

この二人のアクション、楽しめました。静寂で美しい森林と川、湖を舞台に、激しく戦う二人。単純にかっこいいです。
女同士にも関わらず、一対一の攻防戦は迫力がありました。強い‼‼
この舞台にも深い意味があると思います。自然と人工のもの…湖でのラストシーンは、心がざわつくような切なさがありました。
ラストの真実については想像はついたものの、しかし、考えるものがあります…

今作は『ブレードランナー』のリドリー・スコットが製作を担当し、息子のルーク・スコットが監督したもの。ブレードランナーでの“レプリカント”と、この映画でのモーガンはもちろん共通するところがたくさんある分、ブレードランナーとも比較されるでしょう。
しかし、親子のビジョンは同じだと思います。演出の仕方が違うのは当たり前で、その映画ごとに楽しめばいいのではないのかと。そして、『エイリアン』的な密室感恐怖もありつつ、切なさと業を感じて良かったです。
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