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宇宙戦争のTenKasSのレビュー・感想・評価

宇宙戦争(2005年製作の映画)
5.0
2014年の『ゴジラ』でギャレス・エドワーズがやろうとしたことを、10年弱前に数段、いや十段は上のレベルで平然とやり遂げてしまうのがやっぱりスピルバーグの凄まじいところ。

人々が空を見上げている(watch the skiesはE.T.の仮タイトルらしい)→振り向く→禍々しい渦巻き雲→光と風。といった観せたい映画的な画面を作るための、順を追った現象の提示の仕方が徹底されている。

序盤の、電気製品が壊れる→太陽光だけが光源になり、雲間から光が差す→地面にヒビが割れる→水道管が破裂して水飛沫が空中に舞う→飛沫で光が乱反射する→その光の中にトライポッドが現れる。のところは画面も流れもとにかく秀逸。

ラストの鳥が止まっているからシールドがないというのも、中盤に飛び去るカモメの群れを映しその方向を向くと山の上にトライポッドがいるという流れを受けたもの。非現実を現実の視野から補強して現象を描くのがとんでもなくスムーズ。

宇宙人が地球を見ていたことに始まり、穴の空いた窓ガラスからの構図の反復や民間人の手持ちカメラやジャーナリストによる映像解析のシーンは、多くの人が目撃して映像に収め、それが世界中の報道にも使われた9.11を思い起こさせると同時に国が国を監視する衛星の視点と、グローバルな視点にまで拡大して解釈できる。
しかしそれは覗くことができるのは、理解することや全てが見えているということとは違うことも暗に示す。
人間は見えない場所に埋められていたトライポッドに脅かされる。反対に宇宙人は地球人を倒せると分かって地球に来るが彼等からは見えなかったものが彼等を倒すことになる。

「カメラを持ってたから助かったんだ!」って台詞サラッと出てくるけどヤバい。
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