三樹夫

ラストサマーの三樹夫のレビュー・感想・評価

ラストサマー(1997年製作の映画)
2.6
90年代後半にまとめてつくられた、学生が殺人鬼に襲われるティーン向けホラー作品群の一つ。『スクリーム』→『ラストサマー』(脚本家が『スクリーム』と一緒)→『ルール』(プロデューサーが『ラストサマー』と一緒)という流れで製作されているため、既視感があるというか似たり寄ったりというか。この作品は『スクリーム』からメタ視点とコメディ要素out、ドリュー・バリモアout、ジェニファー・ラブ・ヒューイットinという感じ。
車で轢いてしまい海に沈めたフィッシャーマンにメイン4人が襲われるというサスペンスホラーで、もしかして別の誰かがフィッシャーマンになって殺してるんじゃ、あいつ怪しいこいつも怪しいというフーダニットと、実はこいつが犯人でしたのサプライズというのは『スクリーム』と共通するが、『スクリーム』は殺人鬼を完全にマヌケにしてコメディにしていたのに対し、この映画はシリアスにしているため疑問点というかガバガバなところが目立ってしまう。例えば、死体の運搬や隠蔽なんてそうやすやすと短時間でできるわけないだろとか。1階にあんだけ人いるのにどうやって人目につかず死体を短時間で運んだのとか、トランクに入っていた死体とカニをあんな短時間で片づけられるわけない。死体どんだけ重いと思ってんだよという、死体を軽荷物扱いというのがこの後製作される『ルール』とも共通する。これは周りの人間に信じてもらえないとか、あいつ怪しいというミスリードを誘うという展開のためのご都合主義でしかない。
サラ・ミシェル・ゲラーが姉貴の店に逃げ込むのも何で入り口のドアは鍵かけてて裏口は開きっぱなしなのか。これも、早く鍵開けてくれないと殺人鬼に追いつかれてしまうというサスペンスを生み出すため(殺人鬼に追われてる時に車のエンジンが中々かからないみたいな)のご都合主義。
フィッシャーマンはひき逃げされて殺されそうになった復讐でメイン4人襲うけど、一番最初に殺されるのは関係ない人だし。フーダニットのためフィッシャーマンはジェイソンやフレディみたいなモンスターではなくあくまで普通の人間なんだけど、瞬間移動できなきゃおかしいだろとか、4人の行動を神の視点でみてないとおかしいだろレベルの行動になるという、徹頭徹尾ガバガバが目に付いてしまう(しかもフィッシャーマンはモンスター化したところで魅力に乏しいという八方ふさがり)。あいつ怪しいこいつも怪しい、周りの人に信じてもらえない、殺人鬼に追いつかれそうという、こういった展開ありきでそこにキャラクターを当てはめているためご都合主義的でガバガバ。

『スクリーム』は主人公を除いて住民の民度が最低だったが、この映画は住民の民度は普通、その代わりメイン4人の倫理観が最低。一応主人公は途中まで罪悪感があったり、警察への連絡や救助を主張しており同情の余地があったのだが、殺したわけじゃなかったんやしかも殺人犯だからOKという殺人鬼より狂った結論を出し被害者面するという、観ててこいつら死んだ方がいいなと思う倫理観ゼロメートル地帯へ着地していた。ただひき逃げしていようがいなかろうがあのジョックス野郎は死んだ方がいい。ジョックス野郎とミスコン優勝のカップルは、典型的なアメフト部とチアガールのプロムキングとクイーンの高校が人生の頂点の空っぽカップル。勉強はできないのでスポーツチームに入れなければジョックス野郎はゴロツキだし、ミスコン優勝はショップ店員にしかなれない。ミスコン優勝は自分の部屋に冠とチアリーダーのポンポンを後生大事飾ってるのが虚し過ぎる(それしか誇れるものがない)。挨拶しても父親にも無視されるというわりかし同情させるシーンがあったけど、ジョックス野郎は特に何もなく、終始ヘイトの溜まるキャラだった。

特にアメリカの劇中高校生って高校生に見えずオフィスレディとか新卒サラリーマンにしか見えないというのが往々にしてあるが(演じてる役者が20代っていうのが多いし)、主演のジェニファー・ラブ・ヒューイットは、顔立ちもアメリカのアイドル女優でよくある目鼻立ちくっきりっていうよりかはファジーな感じで線の細さもあるような顔立ちだし、公開時18歳と若いのもあって、高校生大学生設定が凄くしっくり来た。着てる服もオーバーオールとかロングスカートで、女子中学生みたいな服装してたし。これが終盤は胸元のざっくりしたピチピチのシャツにローライズのズボンと急にどうしちゃったのみたいな。サスペンスホラーとしてはガバガバなこの映画が、ジェニファー・ラブ・ヒューイットのアイドル映画としてカバーできているかというと、ジェニファー・ラブ・ヒューイット萌え要素はある程度あると思うけど、『スクリーム』のドリュー・バリモアの方が萌えるから、結局二番煎じ、ティーン向けホラーが流行ってるから俺たちも作るかで作られた志の低い映画という印象はいなめない。
三樹夫

三樹夫