椎蕈

ニュー・シネマ・パラダイスの椎蕈のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

みんなで騒ぎながら見るフィルム式の映画を経験してたら、もっと感情移入出来たんだろうなぁって思った。
コメディ映画ではみんなで笑い、感動映画ではみんなで涙を流し、お色気が多い映画ではみんなで興奮する。
観客が映画の世界に入り込んでる感じが面白かった。

トトとエレナが付き合うのはちょっと早い気がした。
数回話しただけで、トトはエレナの事を待つ超受け身なタイプだったのにすぐ結ばれたから、もう少し掘り下げて欲しかった。
それがあるから、結婚をせずに女遊びをしている現代のトトに違和感を感じてしまった。

仔牛の屠殺シーンや、わざわざ映画館でやってるカップルのシーンも要らなかった。
何のために挟んだのか分からない。
あと、序盤は子供に暴力を振るうシーンがちょっと多かったからわりと不快だった。

最後の20分が良過ぎた。
母親がトトが村で過ごしてきた思い出が詰まった部屋を作ってて、不思議と見ているこっちも懐かしい気持ちになってしまった。
数分前まで劇中で起こっていたことなのに。

多くは語ってないけど、アルフレードは自分と同じ育ち方をして欲しくないと思って、トトを村の外に出したんだと解釈してる。
自分は映画館の仕事が好きだし楽しい、だけどトトはもっと良い環境で育って欲しい。
アルフレードはトトと同じ10歳の頃から映画の仕事に携わっていて、立場が似ていたから自分とは違う生き方をさせようとしたんだと思う。

アルフレードに「村には帰ってくるな、私たちのことは忘れろ」と言われて、30年間も連絡すらせずに帰ってなかったけど、アルフレードの死でようやく帰ってくるのも良い。
「最後までトトの話をしていた」という母親の発言や「話すんじゃなく、お前の噂を聞きたい」というアルフレードの発言も、30年間連絡を取っていない重みを際立たせてたと思う。

子供の頃に通っていた教会の映画館に行ってからは無言で表情だけのシーンが続くけど、それが逆に良かった。
2代目の映画館が壊されるシーンは悲しくなるし、その他のシーンでも自分の事じゃないのにノスタルジーがしっかりと伝わってくるのが凄い。
BGMもめっちゃ良かった。
もっと歳を重ねてから観たら、更に感動できそう。
椎蕈

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