ニューランド

ニュー・シネマ・パラダイスのニューランドのレビュー・感想・評価

2.9
こういうほのぼの調も、売りがベタな映画はなんと言っていいのか、正直困る。邦画の加藤嘉の演技だけが素晴らしく、後は・・・の『砂の器』みたいなもんだ。カメダーカメタケ、故郷の近くが舞台として浮き上がってくるので懐かしくはあるのだが、といったかんじ。本作の舞台もマーティン・スコセッシの祖父母の出身地らしい。
まず、老映写技師の教えが尤もらしいだけで、たいしたことも言っていないことから、けっこうきまじめ派は戸惑う。彼も含め、主人公たちもたまたま映画に近い環境にいたことで、こだわりも生まれたというだけで、たいして映画が好きなようにみえない。それは我々も同じで、好きでない映画に敬意を払うこともしない。しかし、ドラマなのだから、その辺もひっくるめて、人と文化の関係を正確に描いてほしいとわりと真剣に思う。社会・歴史性にも突っ走る個人史にもつかず、妙に八方美人・うすっぺらい、まあ、それが人間的とも言えるも。
細部がかなりイージーで、作品毎に切ったフィルムの何十齣を戻さないというのもどうかと思うし、’80年代以降ならともかく当時、長編映画をプロジェクター1台で中断なく上映できたのか、そもそもラストで流される断片集には老人が視力を失って映写に携われなくなってからの作品もいっぱいあるではないか、しかも庶民が愛すタイプではなく地方にはまわらないようなこむずかしい巨匠連のウェイトも大きい、登場人物も創る側の姿勢もかなりいい加減だし相当に嫌らしい、それを愛するのがイタリア人気質というものでもあるまい。
1990年頃か、最後の“秋の洋画まつり”で上映された。他の名品に対し失礼なチョイスという気もしたが、映画を愛する人へ、などと言う言葉とともに、ちゃっかり映画ファンの特等席にもっとも近しい作品に納まってしまった。
それにしても、演劇に関する愛情を捉えた名作映画は多いのに、映画に対するそれは数えるほどだ。ただ、本作も嘘が多いからあまり評価できないということだけではない。それが気にならないほどの、身構えなくてもいいからほんものの核の熱さを偏愛派は観たく、へんにながされてしまってるのが残念ということだ(ただ、スピルバーグ作品もそうだが、一般に伝播するにはこれくらいの温度がいい、というのも事実ー基本タッチに才気がそうない)。
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