KOUSAKA

M/OTHERのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

M/OTHER(1999年製作の映画)
4.0
国立映画アーカイブの企画上映『1990年代日本映画――躍動する個の時代』にて鑑賞。

なんと諏訪敦彦監督も見にいらっしゃっていて、上映前の舞台挨拶を聞くことが出来てラッキーでした😊

三浦友和演じる哲郎が、同棲相手のアキに対して、説得する時も、なだめる時も、謝る時も、全部ズレてて芯を食ってないところがホントに絶妙。そりゃアキも暴発するわ。

「元の生活に戻れるよ」「何で戻れるって言えるの?」とか「何もしなくて良いんだよ」「それじゃただの役立たずじゃない!」とか「仕事辞めて好きなことすれば良いんだ、外国へでも行こう」「何で私が仕事辞めなきゃ行けないの?何で外国なんか行かなきゃ行けないの?」みたいな感じで、このすれ違い具合がホントに絶妙。これが台本なしの即興的演出で生み出されたというんやから、驚きです😵

一見、善人そうに見えて、実は人を食ったような人格のキャラクターを演じさせたら、三浦友和の右に出る者はいないと改めて思いました。

渡辺真紀子の演技も素晴らしくて、特に哲郎の息子俊介や、ママ友やその子供たちとのセリフのやり取りが本当に自然。完全にアキというキャラクターになり切っていて、即興演出に応えてやるぜ!という女優魂を強く感じました。

基本的に劇伴はほとんど入らず、長回しの緊張感と俳優たちの息づかいと言葉に集中させてくれますが、時折忘れた頃に弦楽器の(それこそ即興演奏のような)不協和音が何度か挿入されるのが印象的でした。

アキと哲郎のお互いに対する想いは何度も揺れ動いて、寄り添ったり突き放したりを繰り返しますが、最終的には2人で歩もうとしてる感じのラストでしたが、何かが解決したというわけでもないので、この後2人がどうなっていくのか、気になります。
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