TakayukiMonji

鉄の男のTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

鉄の男(1981年製作の映画)
4.0
アンジェイ・ワイダ監督の81年作で、カンヌのパルム・ドールを受賞した社会派ドラマ。
77年作の「大理石の男」の続編で、前作が共産主義国家とりわけスターリン時代のポーランドの忘れられた英雄を描いたのに対して、今作は80年代終わりに共産主義政権を倒していくことに繋がる、ポーランドの”連帯運動”が始まっていく瞬間とそこに関わる人物たちを描いている。
実在の人物を起用したり、実際のドキュメンタリー場面として撮影された映像を使っていたり、ワイダ監督自身の政治的イデオロギーが色濃く反映されたセリフがとても生々しく、当時の熱量の高さを伝えてくれる。
やり過ぎなくらい真っ直ぐに政治批判する作品(アカ批判)ではあったが、前作の構成よりもこの熱量の高さが個人的にはハマって、見応えがあった。
検閲が厳しい共産主義政権のもとで、1時的に検閲が弱まったという、めちゃくちゃ短い期間で制作をされたらしく、未来に繋げようという監督の思いと執念を感じる。

先日鑑賞したユルマズ・ギュネイ監督の「路」(今作の翌年にパルム・ドール受賞)も獄中から監督が制作をしたというエピソードがあり、その”制作姿勢”が評価されていたように思うが、今作も同様にその”制作姿勢”こそが評価にあたるのかもしれない。
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