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話の話の針のレビュー・感想・評価

話の話(1979年製作の映画)
3.8
配信がもうすぐ終わってしまうというので、ロシアのアニメーション作家ユーリー・ノルシュテインの代表作6編をまとめた『傑作選』をアマプラで視聴しました。

日本で言うところの「アニメ」よりももっと広義のアニメーション作品。切り絵?的なものを重ね合わせたり、実写と合成したり、いろんな種類の描線の絵を混在させたりとさまざまな手法を使っているのが分かります。しかし具体的に何をやってるのかを自分は全然説明できません……。

以下では収録作6編を①〜⑥で表記しますね。
①「25日・最初の日」と②「ケルジェネツの戦い」がまず強烈。前者はロシア革命の熱狂を描いた作品、後者はキエフ大公国の統一戦争?を描いた作品とのこと。こういうイデオロキッシュというか、共同体の記憶に強く訴えかけるタイプの作品も作ってる人だったのかーというのが驚きでした(ちなみにそれが良いとか悪いとかは別にないです)。この辺は他の人との共同監督作っていうのもあるのかもしれない。

③「キツネとウサギ」、④「アオサギとツル」、⑤「霧の中のハリネズミ」の3編は、動物たちを主人公にした童話ないし寓話。この辺が一番親しみやすくて観やすかったです。特に「ハリネズミ」は、出てくる動物や霧の質感がすごくよくて、6編中で一番よかった。主人公もハリネズミというより、無数の木切れを背負った謎の動物に見えるのですが、これがどんどん可愛く見えてきちゃうんですねー。ただ、もしかするとこの3編にも自分が読み取れてないだけで、暗に別の意味が組み込まれてたりするのかもしれませんが。

⑥の「話の話」は30分近くある一番長い作品で、かつ難解でした。無理やりまとめると、オオカミの子を狂言回しの位置に置き、失われた過去への懐旧の念を絵によって綴った映像史、みたいな作品なのかなぁ。ストーリーはうまく掴めなかったけど言わんとしてることは何となく感じられたような……。主人公のオオカミくんが、イモを焼いてハフハフ言いながら頬張ってアツッ! アツッ! って言ってるところがすごく可愛かったです。しかし総じて難しい作品……。

『ファンタスティック・プラネット』のときも思ったけど、日本やディズニーとは別の磁場の中で作られたアニメーションって根本的に何かが違う感じがしてすごくいいですよねー。超月並みな感想ですが。
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