深獣九

クロノスの深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

クロノス(1992年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ギレルモ・デル・トロの長編デビュー作とのことで期待して観たが、裏切らない出来。
見どころは、やはり小道具やセットの造形。見るものを魅了する美しさはさすが。特に、物語の軸となる「永遠の命を授ける機械」は、妖しさ満点。金色に輝く彫像と歯車の精密さ、その中に組み込まれたぬめぬめと輝く昆虫。もう、好みでしかない。監督は荒木先生のファンかも(観ればわかる)。
ほかにも、病人が収容されてる部屋はモノトーンで無機質。無数の天使像が、ビニールの覆いを外されないまま鎖で吊るされている。場所は、研磨の火花散る鉄工所の上。対比が素晴らしい。
ヘススの家の屋上にある物置は、屋根から壁から穴だらけ。その薄暗い物置に差しこむ光がとても美しい。魔術師の仕事。アウロラの携帯している緑の灯りも要所で映える。たまらない。

物語は、ひょんなことから永遠の命を授ける機械「クロノス」を手にしてしまった男が巻き込まれる出来事と、家族愛を描く。クロノスは体の変化と中毒性をもたらす。永遠の命を得るには条件があり、ヘススは人間性を失ってゆく。最後は最愛の孫を前にして一線を越えそうになるが、踏みとどまり、心まで化け物になることは避けられた。ヘススの姿は変わってしまったが、あらためて家族の愛を得ることができたのだ。
このあと、彼はどのような生涯を送るのか、それはわからない。ただ、家族は彼を見守り続けるだろう。代償は大きかったが、悪い結末ではなかった。それはヘススが妻を、孫を、家族をそれまでずっと愛してきたからに違いない。この家族に永遠の幸せを、願ってやまない。

その他気づいたところ。
アウロラがとっても健気。顔もかわいい。孫になってほしい。
クロノス後、脱皮をするのは虫のエキスを注入されたからか。最後は虫化しても良かった。虫になって家族のもとから去る。そんな結末もあったかも知れない。
深獣九

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