安堵霊タラコフスキー

セントラル・ステーションの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

セントラル・ステーション(1998年製作の映画)
4.9
アカデミー賞を逃した作品には、最有力視されていながらも何故か受賞に至らなかったという映画があるものだが、この作品もそんな力作の一つ。

代筆業の女と母を亡くした少年の父親探しの旅を描いたこのロードムービー、女と少年が旅を通じて仲を深め合う様子に感動したり代筆業を有効活用した展開に感心したり(識字率のあまり高くないブラジルならではというのもまた良い)、とにかく非常に優れた出来の作品となっており、ベルリンで金熊賞と女優賞の二冠を達成したのも当然と思える卓越っぷりだった。

ネルソン・ペレイラ・ドス・サントスらから続くシネマノーヴォの流れを継承するかのような画面作りの数々も好印象で、作劇の良さだけでなく映像面においても南米ブラジルらしい乾きと暑さを感じさせる素晴らしさもあったので、その分も加わり尋常でない感動を覚えてならなかった。

映像の好みというか性癖を完璧に突いてくるタルコフスキー作品のような芸術映画も勿論良いが、そういう性癖を超えて純粋な作品の質で心に迫ってくる映画というのもまた良いものだ。

しかしこの作品でベルリンを受賞しただけでなくアカデミー賞候補者にもなった主演のフェルナンダ・モンテネグロ、当時68歳とそこそこ高齢だったのに25年経っても存命っていうのは結構驚き。