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第七天国の一人旅のレビュー・感想・評価

第七天国(1927年製作の映画)
5.0
フランク・ボーゼージ監督作。

貧しい下水掃除人チコとディアーヌの恋の行方を描いたサイレント映画。
1920年代の作品だが完成度は驚くほど高い。チコとディアーヌがアパートの7階にある隠れ家のような自室に向かって階段を上っていく様子を長回しで映し出す演出があまりにも素晴らしい。下水という、地上よりも更に深く潜った場所から天まで昇っていくかのように一歩一歩階段を上っていく二人。貧困と孤独にまみれた人間が、それでも上を向き、希望を抱いて生きていく姿に感動してしまう。
始めは姉に虐げられるディアーヌをチコが支える関係性だったが、戦地に出征することになったチコを今度はディアーヌが優しく支えるのだ。対等な愛の関係性が実現した瞬間であり、掴みどころのない希望が“愛”という具体的なかたちに昇華していく場面でもある。
後半から終盤にかけては泣きっぱなしで、ここまで泣いたのは久しぶりだった。最近の映画だと理解の後に感動が生まれることが多いが、サイレントでは理解の過程は不要。感じるままに映画を観られるというのはサイレントの強みであり魅力でもある。

ディアーヌに扮したジャネット・ゲイナーの可愛らしさが強烈。『サンライズ』で見せた健気な妻の印象そのままに、本作でも慈愛に満ちた女性を演じ切っている。
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