Tsuneno

白夜行のTsunenoのネタバレレビュー・内容・結末

白夜行(2010年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

※過去記事です。

東野圭吾は結構読む作家なのだけど、なぜかこの作品は未読だった。今回、堀北真希主演で映画化されるってことだったので、いっそのこと未読のまま鑑賞しようと思っていた。
東野圭吾作品の愉しみは、ミステリーを純粋に愉しむ部分と、登場キャラクター、具体的には犯人の動機と、それを芽生えさせた背景を愉しむ部分とに大別できると思う。
犯行のプロット、なかなか真相を見破らせない仕掛けはいつも巧妙で、そして真相に辿り着いた先には、大きくそして静かなカタルシスが待ち構えている。早い話、鉄板なのだ。
なので、この作品も、凡作であることた想定していなかった。
 
事前に情報を集めるようなことは、徹底して行わなかった。見え聞こえてしまうものは仕方ないとしても、無知であると決めたので、とことん無知であろうとした。なので、事件を追いかける刑事が船越英一郎であることすら知らなかった。
 
船越英一郎。
冒頭でこのひとが登場したことにより、頭の中にバイアスがかかってしまった。これを「火サスバイアス」と名付けよう。たぶん、これが間違いのはじまりだった。
恐らく時代を忠実に再現するために丁寧につくられた「昭和の風景」は、ただの「古臭い再放送」に見え、そこに現れた戸田恵子がそれに拍車をかけた。丁寧に、それなりの財を投じた結果が裏目に出てしまった。
その上、観に来たタイミングがまずかった。今、僕にしては珍しく連続ドラマをチェックしているのだけど、その作品「control」で、今まさに取り扱われている事件と、この事件の真相が近いところにあることに、早い段階で気付いてしまったのだ。
 
(さて、ネタバレです。真相を知りたくない方はバックスペースボタンを押すこと)
 
事件のあらましがわかったところで、「じゃあ船越英一郎と一緒に謎解きを楽しもう」と思い、真っ先に疑った可能性が「交換殺人」。なにせ、それが今の僕にとって一番ホットなトリックだったから。
 
そして、それを物語に投影したのとほぼ同時に、「やべ、いきなりほぼビンゴじゃん」ってことに気付いてしまった。それが開始後30分くらい。そうすると、巧妙に少しずつ語ったのであろう真相への伏線が、すべて「火サスバイアス」化してしまった。
 
これは、言うまでもなく哀しい出来事だった。
 
そして、ラストのシーン。
ここまで「火サスバイアス」にかかってしまった僕には、クライマックスに高良健吾が座るビルの屋上が、もはや断崖絶壁にしか見えなかった。「これで身投げしちゃったら、完璧に火サスだな〜。でも身投げしちゃうんだろうな〜」と思っていたら、やっぱり身投げした。

これが、僕の観た「白夜行」の一部始終です。

誰が悪いわけじゃないけど、この作品がかなりキャストに金をかけた「デラックス版火曜サスペンス劇場」に成り下がってしまったのを不幸と呼ばずして、何を不幸と呼べば良いのだろう。

しっかし、高良健吾はこんな役回りばっかだな。そのうちおかしくなっちゃわないといいけど。
Tsuneno

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