さすらいの用心棒

あらくれのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

あらくれ(1957年製作の映画)
4.0
明治期の勝気な荒くれ娘(高峰秀子)がダメ男たちを転々としながら自立してゆく様子を描いた成瀬巳喜男の文芸映画。

成瀬巳喜男の映画をそんなに見たことはないのだけど、女性を撮らせると本当にうまいなあ、と思う。市川崑も女性を撮るのがうまいけど、モダンでカラッとしているのに対して、成瀬は等身大の女性をしめやかに映している印象がある。自分の周りに驚くほど成瀬巳喜男ファンがいる理由も、そのあたりにあるのだろうか。さりげない仕草ですべてを表現してしまう技術には舌を巻いた。しっかりと追っていきたい監督のひとりになった。
陰険な上原健、ナヨナヨしている森雅之、グータラな加東大介など、どいつもこいつもクズばかりで見ていて嫌になるのだけど、やるせなさや息苦しさだけではなくクスッと笑えるユーモアがあり、高峰秀子が引っ掻いたり水をぶっかけたりなどの反撃があってスカッとする。

高峰秀子演じる我が強くて自立心がある女性像は、相当なカルチャーショックだったのか、当時の映倫の自主規制に引っかかって18禁になったらしい。ただ、そのくらいインパクトのある演技だった。他にも、宮口精二、志村喬、仲代達矢の使いどころを心得たシーンにもニヤニヤしてしまう。
織田作之助『夫婦善哉』や、太宰治『人間失格』もそうだけど、どうしてこうも男はダメなのだろうか。