SANKOU

カラーパープルのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

カラーパープル(1985年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

まだ少女のセリーは父親から性的虐待を受け、二人の子供を出産する。
が、その子供たちは父親に取り上げられ、彼女の知らない誰かのもとへと連れ去られてしまう。
若くして妻に先立たれ、多数の子供たちと暮らすアルバートはセリーの妹ネティを見初め結婚を申し込む。
しかし彼女の父親はその申し出を断り、代わりにセリーを嫁がせる。
横暴なアルバートは完全にセリーを奴隷扱いし、命令に背けば暴力を振るう。
父親の元を逃げ出したネティは、セリーと一緒に暮らすことを望む。
が、アルバートからの性的な要求を拒んだ彼女は追い出され、仲の良い姉妹は再び離れ離れになってしまう。
冒頭から倫理に反するような場面ばかりで気が重くなるが、作品全体としては牧歌的な明るさもあり、忍耐を強いられるもののどこか達観した明るさを持つセリーのキャラクターに救われる部分もある。
男尊女卑の世界に生きる人々の物語だが、この映画が主題としているのは開放された女性の生き方なのだろう。
いつまでも従順で囚われの身であるソフィとは正反対に、アルバートが熱を入れる歌手のシャグと、アルバートの息子ハーポの妻ソフィアは意志の強い自由な女性として描かれている。
しかしソフィアは白人に逆らったために投獄され、自由を奪われる。
セリーが心を許したシャグもやがて自由を求めて彼女の前から去っていく。
セリーは一緒に連れて行ってと言い出せないまま、再び孤独な囚われの身となる。
この映画を観て、人間が天から与えられた役割とは何なのだろうと色々と考えさせられた。
セリーはどれほど自由を奪われても絶望はしない。
そして自分が苦しくても誰かに何かを与えられる優しさを持っている。
傲慢で卑劣なアルバートの方が、よほどこの映画の中では惨めな存在だ。
シャグが再びセリーのもとに戻って来てからの展開はとても感動的だ。
シャグはアルバートがずっと隠していたネティからの手紙を取り戻す手助けをする。
ネティは自分の手紙が届かないことを承知の上でセリーを気遣い続けていた。
そして今、彼女はセリーの奪い取られた二人の子供と一緒にいることも。
そしてシャグはセリーを自立させるために力を添える。
ずっと虐げられるままだったセリーが、アルバートに自分の意志をぶつける場面は胸がすっきりした。
セリーが旅立った後に、成功した彼女の姿ではなく落ちぶれたアルバートの姿が先に描かれるのも印象的だった。
彼は孤独になって初めて自分の間違いに気づく。
そして償いのためにセリーとネティを引き合わせられるように尽力する。
ずっと忍耐を強いられてきたセリーが立派に自立し、妹や子供たちと再会するラストは感動的だ。
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