レオピン

男と男の生きる街のレオピンのレビュー・感想・評価

男と男の生きる街(1962年製作の映画)
3.8
俺は俺のやり方で必ず真実をつかんで見せる
姉さんのことはそれからだ

大阪城の空撮バックに裕次郎の歌で幕があがる。今回の役は毎朝新聞の大阪社会部エース。裕ちゃんの記者というと、ドラマ『大都会』シリーズでの記者クラブキャップを思い出す。今回対峙する刑事は渡さんではなく加藤武。この北川刑事と裕次郎の新聞記者岩崎との間には浅からぬ因縁があった・・・

ややぷくぷくし始めた石原27歳と、何を食べたらこんなに老けるのかという加藤32歳。男と男の意地がスパークしましたが、最後は何年もの便秘が解消したかのような晴れやかな顔でタバコに火をつけあってました🔥
てなことで南田 芦川は今回添え物。鍵を握る謎の美女に渡辺美佐子。

モノローグが多く時折舞台かと思うような芝居もあったが、でもそれが最後に効いていたのがあの狭い弾薬庫でのクライマックス。東映のように顔密度が高くて圧迫感がよく出ていた。

裏切りの協奏曲を奏でた面々。まるで蜘蛛の糸に群がる餓鬼亡者のような皆さんの愉快な最期。浜田寅彦、高品格、長門勇、そしてヤク中を体当たりで演じた井上昭文(水道橋博士にそっくり)。リアルたけし軍団のようなコントも堪能できました。(長門勇は、数年後には日和警部として、加藤の等々力警部と共に金田一シリーズを彩ることになる)

大坂志郎は短い出演時間ながらも中々凄みがあった。小児麻痺ワクチンやらの密輸で暴利を得たという、『第三の男』ハリー・ライムのような男。自己正当化するのに、カルネアデスの板を持ち出していた。今だとこれがそんなに悪人として描かれないような気がする。少なくとも彼には悪のダンディズムはあった。

あの京都の石庭が美しい東福寺の撮影。最初なんであんな位置から狙っているのか不思議だった。せっかくの石原と芦原が遠景にポツンとおさまっている。カメラがぐーっと引いてハっとする。決して目立たない所で糸を操っている人間がいる。

全体としては、シナリオを練り直せばもっといい作品になりそうな気もする。いやスター映画の限界というものか。でもやはりこの兄弟仁義のような話も一番応用して成功しているのは、毎度クドいが香港映画ではなかろうか。あの後ろにスナイパーがいた見せかけの銃弾も、深夜にだだっ広い空き地に集まってくる車列の感じも、遅れて到着する警官隊もまんま『英雄本色Ⅱ』ではないですか。

ま なんにしても今回はいづみちゃんが無事でよかった。
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