深獣九

キル・ビル Vol.2の深獣九のレビュー・感想・評価

キル・ビル Vol.2(2004年製作の映画)
3.5
愛は麻薬。脳を狂わせる。

劇伴、カメラワーク、長尺の会話劇などタランティーノがギュッと詰まった後編だった。
前編(vol.1)と比べてアクションは少なめ。なぜなら後編(vol.2)は“問い”に対する“答え”だから。

キャラクターの立場や心情がより深く描かれ、物語の本質がつまびらかになってゆく。それはビルとキドーの深い愛、生まれてくる子どもに対する愛、毒蛇暗殺団メンバー同士の関係性。

◯ビルとキドーの愛
ビルは手段を厭わない卑劣な男だったが、キドーへの愛は本物だった。それは本編に描かれなかった、仲睦まじいふたりの様子からも伺える。素直にあらわせなかったのは、闇で生きる者たちの性だし、拗らせてしまったビルの幼い精神性のせいでもある。
キドーが目を覚ましたとき、子どもの命が助かっていると知らされたなら失われる命はもっと少なかったか。愛する者通しは結ばれていたのか。そうであってもよかった。それもひとつの物語なのだ。タラ監督がそんな映画を撮るわけないが。

◯毒蛇暗殺団メンバー同士の関係性
キドーはかつての仲間に瀕死の目に合わされ、復讐の旅に出る。死闘を交わす度、殺意の中に別の感情が垣間見えていた。バドは後悔、エルは憎しみの裏返し、ヴァニータからは友情のようなもが伝わってきた。絆に似た感情があったのだろうな。

◯生まれてくる子どもに対する愛
愛は麻薬。脳を狂わせる。組織から逃げ切れると錯覚してしまうほど。母親の子どもに対する愛情はなによりも大きく深いのだ。


タラ監督は『キル・ビル』を、ラブストーリーだと言っている。前編(vol.1)と後編(vol.2)すべてを観れば納得できる。あらためて前編から観直せば、もっと違う見方ができるかもしれないな。
その時を楽しみにしている。

※特典映像に言及している内容もあリます。ぜひBD・DVDなどでご鑑賞ください。
深獣九

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