さすらいの用心棒

DISTANCE/ディスタンスのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

DISTANCE/ディスタンス(2001年製作の映画)
3.7
無差別殺人を起こしたカルト教団の加害者遺族たち。果たして自分らも加害者だったのか────是枝裕和監督作品

宗教とは、心の傷を癒すもの。
自分の妻は、夫は、兄弟は、恋人は、父は、その癒しをカルト教団に求めた。
自分には、あの人の傷を癒すことはできなかったのか。
自分は、あの人にとって傷を癒せる存在じゃなかったのか。
もしかすると、傷つけたのは自分じゃなかったのか。
考えれば考えるほどわからなくなり、息が出来なくなる。
疑問はやがて心を蝕み、傷だらけにしてゆく。
そして、しだいに同じ傷をもつ者が集まる。
あの人の命日にみんなで会って、話す。
そのたびに、彼らのほうが、あの人よりも距離が近くなる気がしてゆく。
そんな時に、ふと気が付く。
あの人も、同じことを感じていたんじゃないかと────
血がつながっているからと言って、わかり合えるわけじゃない。そんなことはわかっているけど、わからなかったことが多くの人の死につながったのではないか。そんなことを考えると、辛い。
どこまで行っても希望など見えてこない。痛みが癒えることはない。けど、痛みに慣れてゆくことはできる。そんなことを教えてくれる一作。