SANKOU

街のあかりのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

街のあかり(2006年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

『浮き雲』『過去のない男』に続く、アキ・カウリスマキ監督の「敗者三部作」の三作目で、最も辛辣な内容の作品でもあった。

警備会社に務めるコイスティネンは、上司からも同僚からも嫌われる孤独な男。
いつか起業して周りを見返してやるという野望だけは持っているものの、何の計画性もない見栄っぱりな男でもある。
そんな彼にある日、ミルヤという謎の女性が近づく。

「何だか寂しそうに見えたから」

コイスティネンはミルヤに恋をする。
が、実はミルヤは宝石強盗を企てる悪党の差し金だった。
罠に嵌められたとも知らずに、コイスティネンはミルヤに宝石店の暗証番号を見せ、薬を飲まされて寝ている間に鍵を奪われてしまう。

目が覚めた時、はじめて彼は自分が騙されていたのだと気づく。
が、一度惚れた女性を警察に差し出すことが、彼にはどうしても出来なかった。
実は悪党の親玉はそんな彼の性格を見抜いて計画を立てたのだ。

結果的に罪を被ったコイスティネンは、刑務所に送られる。
そしてその後も、ミルヤを庇った過去が、彼をどん底に引きずり込むことになる。

コイスティネンはとても気の毒な男ではあるが、自業自得であるとも言える。
ミルヤを庇って罪を被ることを選択したのは彼自身なのだから。
何の計画性もなしに生きてきたツケを払わされたとも言える。
その点、彼を貶めた悪党どもはかなり狡猾だ。
こういう悪賢い奴らが要領よく生きているのもこの世の常だ。

さて、どん底に落とされたコイスティネンだが、彼は決して孤独ではない。
何故ならば彼のことを想い続けているソーセージ売りのアイラがいるからだ。
そして彼の身の上を心配する一人の少年も。

アイラはコイスティネンが服役している間も、ずっと彼のことを想い続けていた。
しかしコイスティネンは彼女の想いに目を向けようとはしない。
幸せとはとても身近なところに転がっているものなのに。

辛辣な内容ではあるが、例によってどこかユーモアを感じさせるアキ・カウリスマキらしい作品でもある。
相変わらず登場人物はポーカーフェイスで、感情が読み取れない。
そして音楽のセンスは今回もとても良かった。
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