マヒロ

大いなる西部のマヒロのレビュー・感想・評価

大いなる西部(1958年製作の映画)
4.0
アメリカ西部の田舎町に、大地主テリル少佐の娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚するために東部からマッケイ(グレゴリー・ペック)という男がやってくる。穏やかに迎え入れられたマッケイに対し、パックという男が率いる集団だけは彼に乱暴を働き罵ってくるが、パックはテリル少佐と対立する大地主ヘネシー(パール・アイヴス)の息子であり、町の教師ジュリー(ジーン・シモンズ)が所有する水源の土地を巡って争っている真っ最中だった。マッケイは売られた喧嘩をスルーし特に気にもしていなかったが、テリルは激怒しヘネシーの集落に暴力的な嫌がらせで持って報復する。義理の父とは言えその強引なやり方に疑問を抱いたマッケイは、二つの陣営の間にある土地の問題を解決できる方法を考えだす……というお話。

立場や人間関係も度外視し、自分の信念を貫き暴力による報復の連鎖を断ち切ろうとするマッケイの姿がシンプルに格好いい。完璧人間というわけではなく、劇中でも揶揄されるように東部育ちの彼は西部の荒っぽい生活に慣れておらず、馬にも碌に乗れないくらいだったりするんだけど、人知れず練習して何とか暴れ馬に乗ろうと練習したりする泥臭さを持ち合わせているのも良い。

グレゴリー・ペックは製作も兼ねているようで、自身が演じるキャラクターが良いキャラなのはそういうことなのかなと思ったりもしたが、決してワンマンというわけではなく周囲のキャラクターも魅力的に描かれている。特に今作の演技でアカデミー賞を獲ったパール・アイヴス演じるテネシーは、一見粗暴な男に見えるが誰よりも仁義を重んじる男で、卑劣な行動を繰り返す息子・パックにも容赦なくカミナリを落とし、敵対する男の娘婿であるマッケイに対してもきちんと対話の場を設けるなどかなりの人格者で、そのギャップが格好良かった。対するテリル少佐の方が裕福で余裕がありそうな雰囲気にも関わらず、マッケイの意志を無視して仇討ちとして相手の町を襲わせたりする短絡的なところがあり、人は見た目によらないということを体現した2人だなと思った。

雄大な西部の風景も素晴らしく、地の果てまで続きそうなだだっ広い荒野や白い岩に覆われた谷など、これぞ西部劇というような武骨で雄大な風景の連続で、視覚的にも物語的にも楽しめる良作だった。

(2022.99)
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