Kuroita

ウェンディ&ルーシーのKuroitaのレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
4.1
以前に観たOLD JOYの監督さんの。
主人公ルーシー演じるミシェルウィリアムズの細い体とか表情とか見てるだけでこちらも世界に放り出された気持ちになった。
犬のウェンディと離れ離れになったルーシー。2人はバディだったけど、どうしたって一心同体にはなれなくて、相手を大切に思うほど、世界には断絶があるってことを思い知らされちゃって切ない。
わたしが食べたものであなたが生きられたらいいって思うくらい、苦しい。
ルーシーの世界には、でも、ウェンディしかいないのじゃなくて、さまざまな人が登場してくる。
スーパーの店員さんや、メカニックのおじさんや、警備員のおじいさん。
世界には規則があって、規則に従う人とその規則を飛び越えてしまう人がいるけれど、規則に従うのって時々残酷で、そこには正しさのみしか存在しない。
正しくなくても優しい方がいいって思った。規則を破らなくてもたまには譲歩してくれるだけでもいい。

警備員のおじいさんは最初は規則だからとウェンディの車を枠内からどかさせたけど、一緒に手伝ってくれたし、一緒に考えてくれた。
規則を飛び越えてまで、相手の世界に優しくダイブしてきてくれるおじいさんは、優しいスーパーマンみたいだった。
彼の抱えている現実もまた厳しそうな予感がしたけど、彼もきっと規則をうやむやにして飛び越えて自分の世界に足を踏み入れてくれる誰かに出会ってきたのかもしれない。
世界には規則があり、人の数だけ境界線があって、編み編みした線が張り巡らされている。
どうやってかいくぐろうか。
ルーシーとウェンディがまた一緒の世界で暮らせますように。
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