Kuuta

ウェンディ&ルーシーのKuutaのレビュー・感想・評価

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)
4.0
働き口を求めて北上するウェンディは故郷を持たない。自分の意思で停滞からの脱出を試みた前2作の主人公よりも、切実な現実に迫られている。

彼女は車を失う。ニューシネマ的逃避ではなく、生きるために画面内を右往左往する。OLD JOYで「壁がある気がする」と仄めかされた社会階層の断絶は、今作で金網として冷たく具現化している。

自分の足で上手へ歩いた冒頭と対照的に、ラストシーンのウェンディは鉄道に身を任せ、成すすべなく下手へ運ばれる(やはり前2作のラストとは異なる)。社会から弾き出された者の叫びを、アメリカを作った鉄道の轟音がかき消している。80点。
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