ふわふわ

パリ、テキサスのふわふわのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.3
後悔と贖罪

テキサスの荒野を1人彷徨う男…

初鑑賞です。
名作と言われていますね。

テキサスの荒野が主人公の気持ちを表し、ライ・クーダーのギターが映像にマッチしている。
『絵』として心に残る。
荒野、広い道幅、飛行機が離着陸するところ、落書きされた建物、荷台の子供。

ロードムービーのいいところ満載。
景色もいいし、人が人と理解し合うには時間が必要だもんね。
地面に足がついてないと不安になる、時間を感じる感覚は共感できるなー。
飛行機は嫌い。

8mのシーン。
私も子供の頃、家族で自分の過去を見た事を思い出し少し涙する。
幸せだった頃の、今は変わってしまった家族の姿…。

出てくる人がみんな優しい。
弟が迎えに来るところ。
普通怒ってもいいのに、静かに兄を受け入れて気遣う。
主人公と息子が段々と、急ではなく、静かに心を通わせて行く姿が丁寧だ。
お金持ちの格好をして迎えに行くところは滑稽だけど、少しでも息子に受け入れてもらいたい気持ちが伝わる。
息子がとっても良く出来た子。
2人が道路を挟んで歩いて行くシーンが好き。

ナスターシャ・キンスキーの美しさ。
彼女がただ美しいだけで主人公の罪深さが際立つ。
マジックミラー越しに主人公と妻の顔が重なり2人が向き合う場面が胸にのこる。
愛しているのに大事にできない…
お互いの目と目を見ては話せない、本当の心の声…

ただ私は現代の女なので、妻には共感出来なかったが、彼女はとても優しい人。
現代なら主人公は自分善がりの人として断罪されるんだろうけど、周りの人も優しく、傷ついた人への許容が広い、懐が深い、いい時代だったのかなと思いました。

もっと若い時にこの映画を観てたらそれぞれの登場人物の想いを理解出来なかっただろうな。
今観れてよかった。
人は後悔と共に生きていくのだろう…。
少しだけの贖罪を果たせた事が、観ている私の救いになった。
息子さんの幸せを願っています…。
ふわふわ

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