わさび

パーフェクト ワールドのわさびのレビュー・感想・評価

パーフェクト ワールド(1993年製作の映画)
4.1
あまりにも切なくて、苦しくて、呼吸を乱すほど泣いてしまった。
ブッチが、孫を殴った農夫にカッとなって銃を向けた理由が私にはわかるから。それでいて父を求めてしまう気持ちも。親によって抑圧された子供に自分を重ねて優しくしてしまう気持ちも。
2人の小気味良いやりとりや心温まるシーンもあれど、終始胸は苦しく。自分が求めて得られなかったものを人に与えて救われる、抑圧されていた権利を取り戻しあるがままに振る舞う、ある種のカウンセリングのような旅路。ブッチ本人は、ローラーコースターや綿菓子を、子供の頃に与えられたことがあったのだろうか。誕生日を祝われ、クリスマスやハロウィンを楽しく過ごした思い出があったのだろうか。あったのかもしれないけれど、そこに父親の姿はなかっただろう。
この映画にパーフェクトワールドという題がついてることの理由が私にはまだわからない。だってあまりに切なくないか。
悲しくも心温まるロードムービー、では片付けられない、胸に重くのしかかるものがある。
また、ラストがあまりにも…。無常としか言いようがない。冒頭のシーン、フィリップに銃を持たせたシーン、途中でお面を手にしたくだりあたりで結末は想像したが、そこに至った原因があっけなく…。なんともやりきれない。でもこの映画を観て良かったと思う。