現代版の狼男。往年の怪奇映画をそのまんま持ってきた感じで、雰囲気は抜群にいい。
俳優陣もベテラン揃いで落ち着いてしっとり大人の映画。
画面もかなり落とした色調で影の存在感が素晴らしく、どことなくフィルム・ノワールを思わせる。
なのに!途中からどんどんおかしな方向に行ってしまってもったいないなんてもんじゃない。
そりゃ変身人間を扱う以上ある程度は仕方ないと思うよ。でもちょっとどころか猛烈にキワモノに振り切っちゃったよ。
後半のB級具合といったらもう、それまでの格式高い雰囲気を思うと泣けてくるレベル。
狼男モロじゃなく、概念的な作品にして欲しかった。人間の内面とか暴力性とかそういうの。
シリアス路線だったのになんだこの茶番。けだるい低血圧が突然発狂して血管ぶち切れそうってイメージで完全に置いてけぼり。所詮ハリウッドか。
それでも一定の満足感、上質な映画を観たような気持ちになれるのはひとえに俳優さんたちのおかげだと思う。
ミシェル・ファイファーは眺めてるだけで満足できる美しさ。クールビューティーなのでなんとか退廃的な作風に収まった。
ニコルソンもこんな役柄で最小限のキズで済ませたな。
逆にジェームズ・スペイダーは悲惨の一途を辿った。胡散臭い色男の役をやらせたらこの人以外いないんじゃないかとしみじみしながら観てたのに、嗚呼なんということでしょう。
お屋敷、新聞社、森などのロケーションは溜息が出るほど素晴らしかったな。
あ、音楽はモリコーネなので期待してたけど、こちらも残念な出来だった。