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濡れた欲情 特出し21人のニューランドのレビュー・感想・評価

濡れた欲情 特出し21人(1974年製作の映画)
4.1
昔(篇中でも、今と絡め『今昔物語』風に何回か中間字幕も入る)観た記憶では、『~玉の井~』等と並び、最も優雅なめらか心地いい神代映画という印象だった。実際、これに惚れ込みさえすれ、嫌う映画ファンは皆無だろう。しかし、昔の一応点付け・記憶で今、採点記入しようにも難しい。実験映画やアニメの短編もそうだ。当時入れた点数をスライドさせていいのか、再見したいが。ラヴ・ディアス脚本のTIFF出品作と二者択一で迷ったが。ディアスの演出新作よりも更に本作が上なのは端から分かってるが。
観終わり、『東京物語』らと並び、世界に冠たる日本映画の代表、とでも誰にともなく、云いたくなった。流石に小津最盛期には生まれてないが、本作には私たちの、あるいはそれを超える世代の、日本・その文化・芸能・生理・性・空気・空間・音楽・反生活が全て網羅されてる、それも絶妙・伸びやか・儚くいとおしい筆致・存在力で。決まりもの(文句「イクー」「漏れる」や任侠真似事)の落とし所、生々しく風土と生の喘ぎを捉えぬく(フィット揺れ・パン)長廻し、トーンの日常暗めとショーの鮮やか色彩、対比や並行の交互・呼応過去カットぽん挿入・また一気時空を駆け抜ける拡がりと冴え・翻る身のこなしと一体場面転換・らの鋭さ確かさこの上なしモンタージュ、幾つもの集団?の烏合参集・離散・壊滅・新組合せの寄合わせの妙と人生、「なかなか」づくし『濡れた欲情』からのも猥歌いろいろ・都はるみや『怨み節』『~紋次郎』・フォークやCMソングら途切れなしにのりにのり、疾走し駆け回り・また街中ハプニング的をアングルもしっか捉えつくすカメラのポジショニング、夕子・明香・絵沢の今を盛り?の三人三様対比もの肉体の息づきの今となっては貴重な瞳への定着、そして公開当時は認識も甘かった外波山文明の生芸をたっぷり克明に見れるなんて。全てに粋でいとおしく、不穏な迫力もどこかしらあって、宝のような作品だが、改めて、構え・押し付けなく、まさに名人芸として通り抜けてゆく。
映画界を溢れて神代ブームの頂点の頃か、それにしてはその中の最ポピュラー作品の『四畳半~』『~蹉跌』は当時かなりショボい出来にしか見えなかったが。何故か、出る杭の例えか、日活の清順への仕打ち的なものか、’75熟しすぎたのか、’76、1本も映画を撮れず、心配したが、’77『~どんでん返し』でより懐深く見事に復活する。が、それからは目配せしながらの疾走に変わった気もする。
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