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ゴモラのbirichinaのレビュー・感想・評価

ゴモラ(2008年製作の映画)
4.5
この作品の中にカッコいいマフィアは一人も出てこない。ナポリのマフィア(カモッラ)が皆そうなのかは分からないが、熊やブタのような体型でTシャツに短パン、サンダル履きで銃撃戦をする。

全く予期できずギョッとさせられた殺しのシーンが2度あった。

麻薬(覚醒剤?)をカプセルに詰めて製品化するシーンは興味深かった。

5組の登場人物とともに5つのストーリーが展開。
①少年トト: 憧れのマフィアグループのメンバーに加えてもらうも、クスリの運び役や殺しのオトリなど、大人たちにいいように使われる。

②チロ&マルコ: ある組の密売用の大量の銃の隠し場所を運よく見つける。銃を盗んでちょっとした強盗をしたり、その金で得たのか高そうなバイクを乗り回したり、女遊びをしたり…。「俺たちは一人前」と勘違いしている。そして銃を盗まれたマフィアから命を狙われるハメに…。
ヒョロヒョロのチロがマルコにPiselliと呼ばれているのがかわいい。

③ドン・シロ: ドンと呼ばれているからマフィアの中でも上のクラスと思われる。組の経理担当らしく、月々の報酬やお手当てを仲間に配って歩く。大金を身につけているせいもあり、いつもビクビクしていてオウムのようにキョロキョロ周囲の気配を伺っている。危険な目に遭い、防弾チョッキが手放せなくなる。

④パスカル: 幼少期から手先の器用さを買われて、マフィアの一味に仕立て屋の仕事をさせられてきた。有名人が着る最高級オートクチュール服を作っているのに安月給。そんな時、オートクチュール服の受注を狙う中国人縫製工場主に1回2000ユーロの高額報酬で縫い子たちへの秘密出張講義を頼まれ、ためらいながらも引き受ける。だか、それがマフィアに知れて…。
出張講義は送迎付きだか、マフィアに見つからないように毎回トランクの中隠れて移動しているのが切ない。

⑤フランコ&ロベルト: トニ セルヴィッロ演じるフランコは政治家においしい話を持ちかけるインテリマフィア。産業廃棄物処理を低予算で受注。その実態はナポリ近郊の荒れ地に何の処理もせずにただ埋めているだけだからガッポリ稼げる。
部下のロベルトは故郷の土壌が汚染されていくのを見て悩む。
老婆がもぎたての桃をケースごとロベルトにあげるが、老婆と別れてからフランコが冷たく「捨てろ」と命じるシーンが印象に残った。

全編ほぼナポリの方言で、イタリアではイタリア語字幕付きで上映された。今回イタリア語字幕付きのDVDで見て、ようやく内容が解ってきた。
殺しのシーンがなければドキュメンタリーかと錯覚してしまう作風だった。
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